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[コメント] ペパーミント・キャンディー(1999/日=韓国)

時代が彼を破滅させたのか?(2011/02/21)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







場面と場面の移り変わりのとき、線路とかトンネルが写りますよね。その時、脇を走っている車が自然に逆送しているじゃないですか。あれって面白いですね。初めて見ました。自然か車の逆送。

それが面白くてのめりこみました。

映画って本当に面白いな、と。

このドラマは、主人公が狂気に陥る瞬間を要所でとらえて、時間を遡ることで表現しているんですね。だからドラマが過去にどんどん遡ります。

冒頭のシーンで主人公が電車にひかれる瞬間を写していますが、その彼の自意識を過去の事件をひとつひとつ丁寧に示すことで、彼が自殺するまでに至った経緯をわからせようとします。

最後に主人公が若かった頃の素敵な笑顔で終わるのも、若かりし頃の希望のようなものを映像で示そうとしているんでしょうね。

映画では、この主人公がすごしてきた時代背景をあまり細かく表現していませんが、時代の翻弄される主人公の混沌を描いているような気がしました。

主人公に感情移入できない点もこの映画をガードの固いものにしているような気がします。

オアシス』もそうですが、日ごろ我々が目をそむけたくなる現実を作者は示そうとしていますね。この監督はもともと小説家らしいのですが、小説家が映画を撮ろうとすると、どうしても感情表現を具体化してしまいそうになって、映画らしさを失いますが、この監督はとても緻密な考えを持っていらっしゃるようで、登場人物の心情表現などを極力抑制していますね。

カメラの使い方も上手だなーと思います。

何もない画面の脇から少女が自転車乗りの練習をしようと画面に入ってくる。そしてその横を主人公の男性が通り過ぎようとする。この間カメラはじっとしたまま動きません。

動かないカメラに登場人物が横から入ってきてひとつの実態を浮かび上がらせる。なかなか見事な手法だと思いました。

2011/02/21 自宅

(評価:★4)

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