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[コメント] 灼熱の魂(2010/仏=カナダ)

1+1=?。このセンテンスが素晴らしい。衝撃のラスト。これまでのどんなドラマより過酷で美しい。(2012/05/30)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いくつかのカテゴリーに分かれてはいるが、本作はあくまでも女性の数奇で衝撃的な運命を映像化したものだ。

冒頭から過酷だ。

宗教的対立関係にある人との間に身籠った子供。

その子供を手放し、みずからの運命の赴くまま命を長らえ、ゲリラ軍の一員として敵対関係にある元首の家庭教師として潜入し暗殺。その後牢獄で拷問を受け、レイプされて生まれた双子の子供への手紙。

ドラマは、亡くなった母の死に直面した双子の男女の子供が母親の人生を遡る物語。

語り口と映像が素晴らしい。

この母親の運命とはなんだったのか。

母親自身の言葉で語られることはない。

衝撃のラストは

1+1=1

というキーワード。

簡略化すると、愛する人との間に生まれた子供がゲリラ部隊の拷問人となり、自分の母親であることを知らずにレイプして生まれた子供が双子の子供たち。

母の遺言は、生きているはずの兄と父親にそれぞれ手紙を渡すこと。

実はその兄が父親と同一人物であったという悲劇。

こんなことが現実としてあり得るのだろうか。

このドラマのポイントのひとつは宗教対立。

目には目を

あくまでも復讐の鬼と化した母親の一途な人生がそのまま不幸に陥る要因となる。

しかし、プールサイドで初めて自分の息子が拷問人であり双子の父親であることを知って母親は放心状態に陥りそのまま死ぬ。

その死に間際の遺言には、自分の人生を全否定するような言葉。

それは

共にいること。

共存することを肯定し、自分自ら生きてきた人生のすべてを否定する。

この大胆な結末。

これが現実ではないにしても、類似した人生が折り重なる複雑な時代ともいえるかもしれない。

(評価:★4)