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[コメント] 海賊八幡船(1960/日)

物語ることを完全に放棄し思いのまま絶叫する人々。まずは殴り、蹴ってみる。それで気が済んだら叫んで見る。「若!」「惚れました!」「好き!」 羨ましいぜ、南海風。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







(一)序盤:嘉門の養父が死ぬまで

ハッキリいってハナシが良く判らない。大河内はいつものことだが、橋蔵も進藤英太郎も何を言っているのか全く聞き取れないのだ。でもそこは想像力でカバー。俊敏なカメラワークをハッとするような場面展開(橋→ローアングルからの路地)をとにかく満喫出来た。

(二)前半から中盤、土民の島に乗り込むまで

この映画の価値の90%くらいまではこの部分にあると思う。日焼けメイクに凝った衣装、1/1サイズの帆船を使った眩いばかりに真っ青な海上ロケシーンは、東映のみならず和製冒険映画全体の中でも屈指の迫力を備えている。沖ノ島に到着した海賊たちが次々と海に飛び込み、それを数百の島民たちが出迎える画は実に壮観!それは『ベン・ハー』にある類似シーンを遥かに凌ぐ。

また海上戦闘シーンの臨場感も抜群であった。視点に合わせてケショットとセットショットが交互に継がれていくのだが、その違和感が殆ど無い(良く見ると幕に描かれたが弛んでたりするんだが)ことには驚かされた。撮影・照明スタッフの職人芸と沢島忠の天才的技巧があったればこそ成せた技だろう。

また沖縄少女を演じた入江千恵子の豊な胸元、月形龍之介の逆立った鼻ヒゲなどにも目を奪われた。

(三)後半、土民との戦い

青二才さんのコメントにもあるが映画はここから急激に失速する。これは当時の流行(青柳信雄の『極楽島物語』や川島雄三の『グラマ島物語』など)に安易に乗ってしまった脚本段階でのミスだと思う。折られたマスト用の大木を獲得するため、と一応理由は最もなのだが作品全体をチープで如何わしいものに貶めてしまった感が強い。

(四)最期の決戦、ラストへ

何故、時間帯を夜に設定したのだろう。ここではロケシーンとセットシーンが完全に不調和を起している。素晴らしいショットも勿論あるのだが、前半の戦闘シーンほどの充実感は到底得られなかった。何より痛いのは、入り江で炎上する三艘の船(の模型)を捉えたショットの悲しい程に安っぽさ。あれじゃカタルシスは得られんぜよ。

それでも(二)の部分の圧倒的魅力に引きずられて★4・5付けちゃいます。

(評価:★4)

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