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[コメント] 三悪人(1926/米)

美しくも荒々しい背景のなかに点描される移住者たち。数え切れぬ馬車が疾走する土地争奪戦。無法者たちの罪を背負うがごとく劫火に包まれる教会。壮大なロケーションとスペクタクルを背景に蛮行の贖罪とホームタウン誕生を謡う神話にフォード西部劇の原点を観る。
ぽんしゅう

描かれる時代は1870年代。米ダコタ州の土地が一般人に解放された時代。それは無法にさらされていた土地が法治の下に整備され、アメリカ国民の美徳であるホームに根付く家族主義が芽づく時代だ。一方、映画が製作されたのは1926年。第一次大戦で欧州諸国が瀕死の疲弊状態となりアメリカ独り勝ちで経済と文化の栄華を享受していた時代だ。

1926年に描かれた1870年代の郷愁。公開当時のアメリカ国民にとって、これはたかだか50余年前の話しなのだ。つまりお祖父ちゃん(三悪人)たちが無法(悪行)の贖罪として、自分たちの父や母たちを幸福(法治)のもとの繁栄へと導く手助けをする話しなのだ。この滅びゆく前世の"ヒール神話"が無垢の幸福感を放つ"余裕"は、そのまま1920年代のアメリカの"自信”の反映なのだと思う。

(評価:★3)

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