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[コメント] ウェンディ&ルーシー(2008/米)

見知らぬ町で立ち往生してしまった流浪のアラサー女ウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)の「有り金」は、そこに留まるだけで、そして、そこから抜け出そうとするだけで減り続ける。彼女がはまったのは、罪なき善人たちが幸福のために営む消費社会の蟻地獄。
ぽんしゅう

根っからHome(定住)に関心のないウェンディが、愛犬ルーシーの行く末に寄せた思いの切なさ。彼女の「くじけない意志」だけが救いだ。こんなところにも『ノマドランド』(2020)の“捨てる女”ファーン(フランシス・マクドーマンド)がいたのだ。

本作の14年前、ケリー・ライカートが撮った『リーバー・オブ・グラス』では、三十路を前にした女が溜め込んだ鬱屈を非リアルなマンガ的「逃避」として描いていた。本作で鬱屈を溜め込んでいるのは、ウェンディではなくマニュアル化された日常の方だ。彼女はリアルな意志的「逃避」でそこから離れようとしているのだ。この“割り切り”感が清々しい。

ケリー・ライカート、『リーバー・オブ・グラス』は30歳。本作は44歳の監督作。インディペンデント作家の映画ならでは心境の移ろいだろうか。

(評価:★4)

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