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[コメント] 殴られる彼奴(1924/米)

無秩序な「大衆の感情」に、合理な「個人の知性」が圧殺され、社会に埋没していくさまが“惨めに奪われ続ける男”の傷みの物語として描かれる。同形異質な円形(輪)イメージのオーバーラップを駆使して、そんな形而上的な「感情」と「知性」の往還が視覚化される。
ぽんしゅう

殴られる男(ロン・チャニー)の虚ろな目の底に、強烈な虚無が流れている。

スペインの哲学者オルテガの「大衆の反逆」を思い出していた。同時代性を感じたので調べてみた。オルテガが“今日の特徴は、凡俗な人間が、おのれが凡俗であることを知りながら、凡俗であることの権利を敢然と主張し、いたるところでそれを貫徹しようとするところにあるのである。”と書いたのは、この映画の6年後(1930年)のことだった。

(評価:★5)

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