コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] スワンソング(2021/米)

くすんだ灰色の老人施設を飛び出しパット(ウド・キアー)は、よろよろと歩きながら陽光のもと栄光と悔悟の入り混じるの町へ向かう。ピンクの帽子、街角標識の深緑、子供たちの色とりどりのTシャツ。そんな何気ないアイテムによって画面は「色」を取り戻してゆく。
ぽんしゅう

そしてグリーンのスーツを手に入れるエピソードが素敵だ。この「色」へのこだわりは“輝き”をもってラストカットまで続く。

かつての上得意顧客で彼のプライドの支えであり親友でもあり、そして痛恨の元凶でもあるリタ(リンダ・エヴァンス)を弔うために“必要なモノ”を記した紙片を手にパットは失ったものを手繰り寄せるように過去へと向かう。こだわりの高級ヘアクリーム。しなやかな指使いで燻らす煙草。行きつけのゲイバーの取り外されたシャンデリアとその復活劇。旧友である黒人男娼との湖のほとりでの語らい。そして散りばめられる最愛のパートナーへの思い。

老ヘアドレッサー・パットがプライドを取り戻すまでの四苦八苦の“真摯な滑稽さ”が過去への遡行の推進力となり、巧みに時間制御(コントロール)された失ったものへの“思い”の切なさを増幅させるが決して過剰ではない。抑制の効いた上品な語り口に好感が持て楽しめた。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。