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[コメント] ゴールド・ボーイ(2023/日)

原作は中国の小説と配信ドラマだそうだ。巧みなサスペンス構成と手際のよい金子修介演出、3人の少年少女の好演で物語に引き込まれる。脚本の港岳彦が舞台に設定した沖縄の持つ“実情”が背景として浮かび、この突飛な展開の事件のリアルさを担保いている。
ぽんしゅう

手広く事業を展開する東一族のファミリー企業は、米軍関連の案件で戦後急成長し地元政財界への影響力の強さもさりげなく語られる。モデルになる企業がありそうに思えてくる。その経営トップの婿養子・昇(岡田将生)は奄美出身。奄美島は産業に乏しく仕事を求めて沖縄へ渡る人が多く、戦前はそんな人たちに差別的な目が向けられることがあっというTVドキュメンタリーをみたことがある。

朝陽(羽村仁成)の母親(黒木華)は13歳の子の親にしては若い。30歳代前半(黒木の実年齢は34歳)の設定だろか。沖縄の若年齢層の妊娠率は全国平均の2倍だそうだ。彼女は夫に去られ離婚したシングルマザーだ。さらに朝陽と同じ13歳の浩(前出燿志)と異父妹・夏月(星乃あんな)も離婚父母どうしの再婚家庭。沖縄の離婚率は国内ワーストワンだ。そして浩の父親はまともに働いているように見えない。やはり失業率も沖縄がワーストワンだ。

そんな日本の片隅の実情が頭に浮かぶと、このいささかエキセントリックな逆ベクトル的成り上がり願望にリアルさを感じてしまうのだ。だって、ここ数年来、路上や列車内で散見する自虐的な無差別暴力だって本作の登場人物たちと同根の思いがなせる所業じゃないだろうか。そんなことを考えた。

(評価:★4)

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