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[コメント] 雨月物語(1953/日)

男って本当アホばっか。でもそんな男を見放せない女も結局はバカなのかなって。でもなんといとおしい生き物なんだろう、人間て。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この作品は儚くも美しい「ひらがな」みたいで、最初はその線の細さが物足りなくも感じたんですが、観れば観るほどその美しくも不気味な世界に引き込まれました。本当に怖い。若狭(京マチ子)も怖ければ乳母の右近(毛利菊枝)も怖い。しかも私、雅楽が苦手で、聴くと鳥肌が経つくらい怖くなるんです。そんな雅楽が鳴り響く中、暗闇にぼーっと浮かび上がる白塗りの能面みたいな若狭の顔は、海外の人が見たらもっと怖くて、そしてファンタスティックに映るんだろうなと思います。

それからお屋敷も非常に美しい。シンメトリーな部屋や、障子の奥にぼーと灯るあかり。日本は本当、最高に美しくて幻想的で、芸術的!でもそんな"日本独特"の美しさが薄気味悪さを倍増させるんでしょうね。あと、侍女のそつのない動きにも美を感じてしまいました。着物の裾を捌く美しさ、立ったりしゃがんだりする時の美しさ。その立ち居振る舞いは非常に優美でした。欲を言えば京マチ子の立ち居振る舞いにもこれくらいの優美さがあればなおよかったかなーと思いました。

それから、湖のシーンは霧の立ち込める中、どうしても室内撮影のような雰囲気が漂っていて(声の響き方とか)奥行きを感じる事が出来なかったのが残念。

そして私の中では京マチ子よりも断然、宮木(田中絹代)!本当怖くて震えがきた。それなのに震えながら涙が出た。もう号泣、号泣。なんて悲しくて切ないんだろうってわーっと涙が出た。ラストの宮木による語りは、いつもなら説明くさいから要らないって思ってしまうようなものだったんですが、彼女の声の不思議な響きがもう、涙腺を刺激するったら!ろくろを回す手伝いをしていた場所がシンと静かに映された時もうっときて、そんな中、一人黙々と作業する源十郎(森雅之)の姿がまた涙を誘う。

男って本当アホばっか。でもそんな男を見放せない女も結局はバカなのかなって。でもなんといとおしい生き物なんだろう、人間て。本当にそう思いました。

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08.04.18 記

(評価:★4)

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