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[コメント] 2001年宇宙の旅(1968/米=英)

2001年になってもHALが出来んかったのは、モノリスを発見できなかったからでしょう。しかし、CGコテコテの映画が公開されるたびに、この映画に立ち戻ってしまう〜。人類が犯した罪悪を贖罪する永遠の旅を描ききる壮大な皮肉映画。
ヒエロ

**ネタバレ注意**
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まぁ、次元は違うだろうけど、資本主義からポスト資本主義に移行する時代にあれば、この映画を評価する人はもっと増えるだろう。なぜなら資本主義の時代にあった数知れぬ人類の罪悪の記憶を持ち続けたまま、「次の時代へ行ける奴」だけが行き、そこでは資本主義が残した恐怖と罪悪を贖罪し続けることが待っている。この映画が分かる奴しか、この映画を楽しめないのと同じだよ。これこそ、この映画のテーマであって、見る者は作り手(すなわち「神」)によって主人公同様に「選別」されるわけだ。この映画そのものが「モノリス」とまでは言わないが、見る者さえもこの映画の一部にしてしまうキューブリック一流の美意識というか皮肉が隠されている(『時計仕掛けのオレンジ』とて同じ)。

猿人が骨を手にして進化への扉を開くとき、バックに流れるのが「ツァラトゥストラはかく語りき」なのはどうしてか?。「神は死んだ」と宣う後に、超人の思想を説き、最後は「永劫回帰」によって巷の生業を乗り越えよと(まぁ、ある意味引きこもれとw)。これには重要な意味がある。巷の生業でもっとも罪深いのは何か?それは人殺しである。猿人は手にした骨で同族を殺し、ボーマンもまた殺人とHAL殺しをする。そう、ボーマンはHALにプールを殺させたと俺は断言する。だって、ボーマンはHALが唇を読めることを知っていたんだもん(他の連中が人工冬眠をしている最中、彼がスケッチした物をHALに見せて、誰を書いたかを確実に当てている・・・つまり、その程度のパターン認識力がHALには備わっていることを彼は知っていた)。自ら手を下して殺しちゃダメだ。「自ら生み出した道具を使って殺す」ことが「選択」の条件であり、ディスカバリー号が精子に似ているのは伊達じゃない。受精できるのは一匹だけな訳よ。これがボーマンの殺人動機だ。

何者かの選択によりボーマンはスターチャイルドへ進化し、宇宙創生からの時間を巡って最後に地球を見下ろす存在になるが、この場所で「永遠の命」を持って人類の犯した行為に恐怖せよっていう宇宙そのものの意志だ。死ぬことは許されない。永劫回帰によって贖罪せよと言うことだ。言っとくけど、モノリスを置いたのは神じゃないからね。「ツァラトゥストラはかく語りき」は、端から「神は死んだ」って宣っているだろうに。

この映画、映像と音楽に頭までどっぷり浸れる視聴環境じゃないと、楽しめないかも知れん。自分の視界からスクリーンの外の部分が無くなるくらい浸かってしまうと、この映画は面白い。

(評価:★5)

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