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[コメント] クレイジー・ピープル(1990/米)

死んだ父に見せたかった。(以下、ムダに長い私事が続くので、お時間のある方に面白半分に読んでいただくのがベストです)
ユリノキマリ

私の父は、2002年4月に急死しました。

彼は私が映画好きだということは知っていたので、歩み寄りとして「○○(映画のタイトル)っておもしろいのか?」などと話題を振ってくることもありましたが、ちょっと好みでない(したがって未だ見ていない)ものが多く、残念ながら、話が盛り上がることはありませんでした。

が、父と話すのは嫌いではありませんでした。時々、隠し玉的に持ち出す自己エピソードを聞くのが好きだったのです。ちょうど『アンジェラの灰』のフランク少年の気持ちだったと思います(飲んだくれで結構しょーもない人だったし)。

特に気に入ったのは、以下の話です。真偽のほどはわかりませんが。

私が育った家の近くには、そこそこ広い公園があり、時々、外出許可をとったらしい近所の病院の人が散歩に来ているのを見かけました。

入り婿だった父は、界隈の事情に慣れておこうと、結婚当初、よく独りで散歩をしていたそうです。そのコースの中に、くだんの公園も入っていました。

ベンチに腰掛けると、パジャマにカーディガンという姿の男性が声をかけてきました。落ち着いた物腰の感じのいい初老の男性で、話題は非常に豊富。何を話してもポイントを押さえている感じで、まだ年齢も若く、決して民度が高いとはいえない土地に「嫁いで」きた父は、知的な刺激に飢えていたこともあり、小1時間、非常に有意義な時間を過ごしたと言います。

ディスカッションの「お開き」は、その男性を迎えにきたナースによって告げられました。「さあ、もう戻りましょう」と男性に促す一方、父に、「この人何か失礼なことをしませんでしたか?」という趣旨のことを言うのだそうです。この品性いやしからぬ感じのいい男性をして、その心配は一体ナンだ?と思ったら、ナースは近所の精神病院のナースで、男性は、そこの患者さんだったというのが真相でした。

その後、精神科だけが別な場所に移されたということですので、私が子供の頃に見かけた寝間着姿の人たちは、精神科の患者さんではなかったと思いますが、この、まるで都市伝説のようなエピソードを、私は幼い頃から何度も聞き、何度聞いてもおもしろいと思いました。よくよく考えると、精神科の病院で、そう簡単に外出許可を出すのかどうか、その辺はよくわからないのですが……。

この映画を初めて見たとき、父から聞いたその話を思い出しましたが、この映画を父との会話で出すことはついぞありませんでした。今さらながら、一緒に見ておけばよかったなあと思います。

(評価:★4)

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