以下、長く冗漫な余談が続きます。

児童文学・まんが・人気キャラ・イラスト等々、「かわいい」「ステキ」なものは何でもござれの老舗雑誌「Ｍ」というのがあります。その誌名から、いわゆる萌え系と勘違いされることもあるのですが、読者コーナーから読み取れる読者層の傾向は、大分違うようです。

その「Ｍ」には読者公募のイラストコーナーがあり、毎月力作を見ることができますが、４〜５年前でしょうか。若い男女がリビングでくつろぐ？場面が、印象的な筆致で描かれたものが、選に入っていました。

ありゃりゃ、でもこれ、どっかで見たことあるぞ。

カウチに横並びに座る２人。ロングヘアの女性が、クルーカット？でつなぎを着た男の手をとり、テーブルの上には脚が長くて細いグラス……もしやと思い、映画雑誌のバックナンバーを当たったら、案の定、ブレンダン・フレイザーとアリシア・シルバーストーンが、全く同じ構図で座っているシーンのスチール写真がありました。

しかし、描いた御本人がつけたらしいタイトルからも、選者のコメントからも、『タイムトラベラー』からの「いただき」らしきことは読み取れません。どころか選者のコメントでは、作者のオリジナリティーを褒めてさえいました。

偶然の一致というには、一致点がいかにも多過ぎました。映画ファンにはおなじみの顔ぶれでも、映画に特に興味がない人には「マイナー」の一言で片づけられそうなこの作品、作者が、どうせバレっこないやと思ったとしても、何ら不自然ではないと思います。

今思うと余計なお世話ではあったのですが、この映画が好きな私は黙っていることができず、早速編集部にその旨ＦＡＸしました。映画のシーンとイラストの類似（酷似）点、プロの方というわけではないようだし、決して入選を取り消してほしいという意図はないということ、返信は特に要しないことetc．自分の発言には責任を持とうという意味で匿名にしたくなかったので、敢えてメールではなく電話番号がわかるＦＡＸを利用し、名前・住所も明らかにしました。

で、ここが私の性悪なところなのですが、上記のようなことを書き送りながら、私は２号先ぐらいの号で、「○月号のイラストコーナーの△△さんの作品につき、読者からの指摘を受けて」云々と、入選取り消しまではいかなくとも、何らかの警告のような一文が載るのでは、と期待しなかったと言ったら嘘になります。「読者からの指摘」も、私１人だけではなく数件あったのではないかということも、当然期待しました。

しかしその後、何の反応もなく、私自身に対しても、これといった反応もありませんでした。結局、送信料金分を電話会社が儲かったというだけです。そんなわけで、あの作者と編集との間に、その後何らかのやりとりがあったか否か、その辺も全くわかりません（何もなかった可能性が高いと思いますが）。

それが直接の原因ではありませんが、私はその後、「Ｍ」の定期購読をやめました。今現在は、おもしろそうな特集のときに買ったり立ち読みしたりする程度です。つらつら考えるとこの映画、「Ｍ」読者層が好きそうな、実にチャーミングな作品なんですよね。

時々テレビＣＭなんかでも、もろに映画のシーンのパクリじゃないの、というような作りのものが、ネット上で話題になったりすることがあります。もっと有名な、例えば『タイタニック』の有名シーンだったら、たとえ映画を見たことがなくても、即パロディーやシャレということで片づきそうなのに、残念な話です。

やや欺瞞的かもしれませんが、「絵になる男女の絵になる物語だったなあ」ということで、とりあえず自分を納得させるのみです。