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[コメント] テキサス・チェーンソー(2003/米)

オリジナルはただの低予算B級映画のはずだった。だが我々レアなファンがそれを「カルトの金字塔」ともてはやし、この30年もの間に映画界の都市伝説にまで昇華させてしまったのだ。
sawa:38

私の映画歴の中で、今思い出しても恐ろしいキャラクターが二人いる。『八つ墓村』の多治見要蔵であり、もうひとりが本作のオリジナルにあたる『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスだ。

彼等は怪物でも幽霊でも宇宙人でもなく、人間だった。会話する事が可能であるにも関わらず、彼等は問答無用に殺しにきた。しかも「走って追いかけてきた」

この「走って追いかけてきた」という前代未聞の設定に30年前の私は度肝を抜かされたのだ。隠れてやり過ごすなんていうホラー映画のような逃げ道は用意されていなかったのだ。自身の体力の続く限り走って逃げる。体力が尽き走れなくなったら、奴に切り刻まれる。選択肢はそれしか無いという恐怖。

話を本作に戻す。本作は往年のオリジナルファンにはすこぶる評判が悪いらしい。それはそうだろう。都市伝説にまでなった作品を今更超える事なんてあり得ないのは明白である。しかし、それをあえてリメイクする勇気(馬鹿か?っていう感じもしないではない)をあえて私は賞賛したい。30年前に味わったアノ恐怖を現代の若い映画ファンにも知ってもらいたいからだ。

いくら何でも30年も経てばカルトの金字塔もいささかカビが生えてしまっている。それが現代の金をかけた技術で蘇れば・・・・・

本作はソノ雰囲気を十二分に再現してみせてくれた。閉鎖的なアメリカ南部・暴力と麻薬への垣根の低い南部の住民たち。そしてやっぱり奴は走って追いかけてきた。

ただ、そこまでディープな雰囲気を描いたのなら、オリジナルが大きく掲げていた「もうひとつの狂気」・・つまり狂った家族を何故にあそこまで描かなかったのか?ともすれば「普通」にみえる家族に潜む狂気。これこそが『悪魔のいけにえ』における根底の恐怖だったのに・・・

母親が言う。「お前みたいなアバズレ女がウチの息子を馬鹿にするんだ」閉鎖された社会と近親相姦、そしてコンプレックス。

この辺りの設定をもっと拡大して、主人公の巨乳娘に対する屈折した感情を爆発させて欲しかった。それにこのヒロイン、なかなかのスタイル。にも関わらず一切のエロシーンもなかった。本作はもっともっとエログロに特化していいんだ。そういう映画のはずなんだ。

私なら、ヒロインが家族に捕まったリビングのシーンで、オリジナルにあった食卓のシーンを挿入するし、彼女の恋人のペニスを切り取ってソレで彼女を犯し、その後彼女に無理やり食べさせるぐらいのエピソードを入れても良かったと心から信じている。

嗚呼、こんな映画のコメントでこんな事書いてる自分がとても惨めに思えてきた。

そう、本作の前半でのガソリンスタンドにあった汚いトイレ。そう、あの汚い便座に無理やり座らされていたような90分間だった。そして鑑賞後の今もあの便座に座ってこのコメントを書いているような惨めな気分である。

(評価:★4)

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