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[コメント] 明治侠客伝 三代目襲名(1965/日)

語り草のタイトルバックから嵐寛寿郎襲撃シーン、そして犯人との検分のシーンと、計算され尽したカット割りは映画を勉強する上での教科書足りうる。クローズアップされた「静かな画」が語りかける迫力は私を緊張させる。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭の祭りのシーンの静かなる超俯瞰カットが、一転して騒然な御輿のカットになる。カメラは暴力的なまでの男達の足元を追い、汗と怒号が飛び交う激しいカットである。そしてスクリーンに収まりきらぬ程の暗殺者汐路章の「異常」とも思えるクローズアップでこの作品は幕を開ける。

激しい御輿の男達。だが、同時に進行する襲撃は「静寂」なカットで進行し、観客は「静」と「動」の波間に翻弄され、計算され尽した緊迫感を味あわせられる。

そして続く犯人の汐路章嵐寛寿郎との対面シーンでは、クローズアップの多用による演出の妙が心地よい。否、あまりにも極端なクローズアップの連続に圧倒される。

カメラは自首してきた汐路の視線で嵐寛と対面する。だがカメラは嵐寛を通り越して黒幕の大木実の後姿を捉える。大木の「耳」がぴくりと動き、汐路の「目」が動揺する。次いでカメラは嵐寛の「足首」を捉え、流れる鮮血を映し出す。鶴田浩二の表情と手ぬぐい。そして最後にまたしても不敵な汐路章のアップ。

この間、いくつかの台詞はある。だが極端な「静なる」クローズアップの連続が台詞を忘れさせてしまうかのような迫力を持つ。このカット割りは極論かも知れぬが、台詞を陳腐化させてしまう程の力強さがあるのだ。

いやぁ、映画とは映像とはこれ程までに力強いものなのかと今更ながら感心させられる。

(評価:★5)

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