[コメント] 木枯し紋次郎(1972/日)
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トレードマークの紺の合羽に三度笠、長い楊枝に左ほおの傷。「あっしには関わりねえこってでござんす」という言葉で有名になった同名テレビシリーズの映画化作品。主演に中村敦夫、演出に市川崑という豪華な布陣で臨んだテレビ版だったが、本作は主演に菅原文太、監督に中島貞夫を起用することによって独自路線を走ることになる。本作は本作でヒットし、続編も作られる事になる。
テレビ版を俯瞰して言えば、典型的な股旅ものに、虚無感を漂わせた紋次郎という人物を加えることで、独特の雰囲気を醸していたのが特徴だろう。紋次郎は基本的に人のごたごたに首を突っ込むことはしない。出来るだけ関わらないようにしているのだが、それは自分自身が義理人情に厚いから、関わってしまうと最後まで関わらずにはいられなくなるから。中村敦夫の表情も様になってたけど、色々頼まれると嫌そうにしているが、しかし一旦関わったからには、途端に表情がびしっと決まる。という一種二面性を持った人物描写が映えていたのが特徴だったと思う。
しかるに本作の場合、微妙にテレビ版とは紋次郎の性格が違っている。むしろ最初から積極的に義理人情に流され、それで酷い目に遭わされてしまうという、ある種のお人好しとして描かれているのが特徴だろう。
テレビ版に慣れ親しんでると、どうしてもそこがちょっと気になるところ。
と言うことで、実は結構評価が低かったのだが、改めてレビューしてみると、これはこれで味があることに気付く。発想を転換して、テレビ版の前史的な位置づけとして考えてみると合点がいくことが多い。
テレビ版の紋次郎が何故あんなに虚無的になっていったかと考えると、それまでに数多く義理人情に絡め取られて酷い目に遭ってきたからとは言えないだろうか?そう考えると、これがまだ若かりし頃の紋次郎という設定だったら、こういう事があったから、ああいう性格になったのかも。と思えるようになった。本作の場合、紋次郎の若い頃。と考えるなら、素直に観る事が出来るんじゃないかな?最後、何もかも失って一人去っていく三度笠姿が直接テレビ版へとつながっていくと考えることも出来よう。
途中の三宅島の演出はちょっとかったるい所もあるとはいえ、殺陣の迫力は流石。やっぱりこの当時の菅原文太は動きに張りがあって、惚れ惚れするほど。劇場用作品らしく、派手さも充分。抑えに抑えた怒りを最後に爆発させるカタルシスもあり。
テレビ版とは又別な魅力のある作品と言えよう。
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