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[コメント] エデンより彼方に(2002/米=仏)

いわば、ハリウッドの回帰的作品ですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 2002年の話題を一種さらっていった作品で、各種映画賞も次々に受賞。特に主演のジュリアン=ムーアにとっては、本当に久々に大当たり作となった作品。本作はそもそも問題作を連発して描き、1950年代に何かと話題となったダグラス=サークの小説が元となっている。その話題性により50年代には映画化も多く、『哀しみは空の彼方へ』(1959)および『天はすべて許し給う』(1956)と言った作品が作られていたが、この二作をベースとして二つの方向性を持った作品(つまり夫の同性愛問題と、人種を越えた愛情という形)として仕上げられた作品。

 ところで本作を一見して思ったのは、残念ながら、「古くさい作品だ」と言うだけの印象でしかなかった。

 50年代ならセンセーショナルな話題になったであろう事件も、今の目で観る限りは今更。と言う気がしてならない。この手の作品はこれまで何本も観てきたし、今になって作る意味があるのか?と言う思いでしかなし。確かに画面は見事なレベルだし、演技者も自然な演技がしっかり出来ていた。だが、やはりそれは「今」を感じさせてくれなかった。

 映画の面白さの一つとして、作品を観ることによって、その映画の中に入り込むだけでなく、その時代性の息吹を感じることも大切。これを作る必要があり、そしてそれを世に問う。と言う挑戦的なものを感じさせるのが、映画好きの醍醐味だろう。

 しかるに、本作にはそれは感じられず。良くできた古い文学小説を当時の手法そのままに現代に作ってみました。というウェルメイド感漂う作品にしか思えなかった。

 もう一つ重要なのは、私が日本人だと言うこと。本作が特にアメリカで多くの賞をもらったのは、これを観たアメリカ人に当時の匂いというやつを感じさせてくれたと言う事実が最も大きかったのだろう。古き良き時代を回顧して懐かしんで観ることができたと思うのだが、その感慨は私にはないし。

 それに二つの物語を強引に一つにしてみました。と言う印象が強く、最後まで中途半端な気がしてしまう。

 勿論人物描写とか演出とかは水準以上の作品であることは事実。ムーアはやっぱり上手いし、特に秋の描写は本当に綺麗。

 強いて言えば、私には合わない作品。

(評価:★3)

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