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[コメント] ドラゴン危機一発(1971/香港)

純朴であり、容赦なし。このギャップが最大の魅力だと再認識しました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 元々香港映画は武侠映画が盛んだったが、それは京劇から来ている。舞うように身を翻しつつ、なかなか当たらない攻撃を延々と繰り返す。というのがその戦いのパターン。次にやってきたカンフーブームでもその伝統は継承され、特に一対一での戦いは舞踏に喩えられるような動きで戦いが演じられる。

 そんな中、一石を投じたのがリーだった。彼の戦いはこれまでの動きとは違い、一直線で、しかも一発一発が必殺という、これまでのカンフー映画の常識を覆したものとなった事が挙げられるが、もう一つ、リーは好んでちょっと強いだけの普通の人間を演じることを好んだことが挙げられよう。それまでカンフーの達人は武人として辛い訓練に耐え、肉体のみならず心も鍛えられた人間として描かれることが多かった。結果、訓練が物語のメインになることがほとんど。しかしリーの作品はその過程を飛ばし、ストーリーそのものを見せようとした事に最大の特徴があると言えよう。彼は強い。だがその強さは様々な形で封印されているが、ある時を境にその封印が解ける時、本物の強さがそこに誕生するのだ。

 それまで作られたのとは全く異なる物語形式に、さすがにスタッフも慣れてないためか、物語はちょっと単純なきらいがあるし、こなれているとは言えないのだが、暴力を禁じられた主人公が耐えに耐え、そして禁を破って最後は大活躍と言った物語形式はむしろ香港の武侠映画よりも日本の任侠映画の方に近く、むしろ日本人にとってはなじみの深い内容になってる(それ故にこそアラが目立つとも言えるのだが)。

 それを覆ってあまりあるのがリーの存在感だったと言えるだろう。彼は純朴でものを知らない田舎の青年だが、彼には野心もなければ人を陥れるような性格もしてない。ただ単純なだけ。その天衣無縫さを演じられたのがリーの大きな強みだっただろう。メディアには怒りの表情ばかりが露出しているのだが、リーの本当の魅力は笑顔にあると思うので。

 本作は出資はタイで、ロケもバンコク郊外で。道理で暑そうな感じだったわけだ。

(評価:★4)

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