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[コメント] ドッジボール(2004/米)

差別されてきたアメリカ人よ。今こそ立ち上がれ!という感じで受けたのでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作を観て、ハリウッド映画の割にはずいぶんウェットな作品だ。と言うのが最初の印象だった。物語そのものはアメリカ人好みの作品じゃないと思うんだけど、何故か本作が大ヒットという(そもそもその触れ込みだったから興味を持ったんだけど)。

 私なりの理解では本作は決してアメリカ人好みの作品ではないはず。だけど何故ヒットするんだ?

 実は今もってちょっと分かってないのだが、一つには本作で製作に当たり、憎々しげなライバルを演じているベン=スティラーはアメリカでは有名なコメディアンだから。という点は確かにあるだろう。

 それともう一つ、本作には面白いキー・ワードが散りばめられているので、それがあるいはヒットの原因だろうか?とも考えている。以下は私の妄想なのだが、妄想にしては適合する部分が多いと思う。

 そのキー・ワードというのが実は“人種差別”というもの。

 この作品には数々のキー・ワードが散りばめられている。例えばヴォーン演じるピーターが経営しているスポーツジムの名称は“アベレージ・ジョー”訳すれば“平均的なジョー”だが、ジョーというのはアメリカ人そのものを示す言葉と考えれば、これは「普通のアメリカ人」とか意訳できる。又ジョーというのは、もう一つ、アメリカ産フィギュアである“G.I.ジョー”の“ジョー”であるとも言えるだろう。これを探るのは簡単で、ホワイト率いるドッジボールチームの名称が“パープル・コブラ”で、“コブラ”とは“G.I.ジョー”に敵対する組織名だから。

 G.I.ジョーはまさにアメリカ人そのもの。しかもアングロ・サクソン系に限られたヒーローとしてここでは捉えられているように思える。事実アベレージ・ジョーはみんなアングロ・サクソン系なのに対し、パープル・コブラはユダヤ系を筆頭にアフリカ系やプエルトリコ系など民族的には多彩。他のライバルチームにしても、緑色のユニフォームの“ランバージャック”はアイリッシュ系だし、“カミカゼ”は…言うまでもないな(笑)

 これまでのハリウッド作品は大体マイノリティが主人公となって、アングロ・サクソン系はわざと悪役となっているパターンが多かった。上品に作るとどうしてもそうなってしまうし、“人種差別”というレッテルを貼られるのも嫌。だからマイノリティを持ち上げるのだが、そうなると、悪役はみんなアングロ・サクソン系が演じることばかりで、なかなか主人公になれない。

 だからこれは、これまで不当に低く置かれてきたアングロ・サクソン系の復讐劇として考えることも出来るだろう。駄目な白人連中がエリートの他民族を押しのけていく。アメリカ人としては、こう言うのを観て溜飲を下げたかったのかも知れないのだから。  更に言えば、製作にも関わったのがベン=スティラー本人だったというのもポイントではあろう。この人は何かと「俺はユダヤ人だ」発言が多いのだが、そんな彼がアメリカ人のために作ったのが本作とすれば、かなり皮肉な作品として観ることも出来る(だからこそ本作には人種差別のレッテルが貼られない)。

 スティラー自身が自虐的にノリにノッて作っているため、自らの造形が無茶苦茶なのも良し。久々に劇場に登場したチャック=ノリスも、相変わらずのやんちゃぶりを見せてくれている。

 勿論話はパターンだし、アラも色々あるけど、こういう風に考えてみると面白いもんだ。

(評価:★3)

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