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[コメント] 醜聞(1950/日)

志村喬と三船敏郎の食い合いでは、本作は明らかに志村喬に軍配があがります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 だから本作は前半の方が良いか、後半の方が良いか。という話になりがちだが、私は後半の方が好き。前半部分のマスコミに対する批判は、映画でそのテーマを扱うのはほとんど初めての試みだと言うこともあってか、ちょっとリアリティが希薄な印象なのだが、後半志村喬の独壇場になっていくと、これはこれで見所が多い。

 志村喬は黒澤明に見いだされるまでは、キャリアこそ長いがあくまで脇役としか見られてなかった人物で、黒澤作品でも『酔いどれ天使』では本来主人公だったはずなのに、脇役だった三船敏郎に食われまくってしまい、あんまり目立つことが出来なかった。黒澤もそれを感じていたのだろうか?本作は、まるでその意趣返しのように本来の主人公である三船敏郎を食う役割として登場。見事にその役どころをきっちりと演じきっているし、何より人間の弱さと強さのどちらも兼ね揃えた人物として、まさしく適役だったとも言えよう。脇役生活が長かっただけあって、どういう演じ方も出来るのは、この人の最大の強みだ。少なくとも、人の強さや弱さと言ったものがどこから出てくるのか。彼はその点において本当に上手い演技を見せている。

 設定がかなり弱いことと、物語が単純化されすぎた事があって、あまり高評価は与えにくいのだが、少なくとも志村喬という人物の演技を見る作品としては充分な物語だとは言える。

 『酔いどれ天使』、本作、『生きる』と至る志村の主役作品の変遷として見るのも又一興だろう。

(評価:★3)

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