コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 二十四時間の情事(1959/仏)

やってることは間違いありませんけど、この題は誤解されるのでは?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 大映との合作による日本を舞台とした作品で、1945年の原爆投下のドキュメンタリー映像を、復興した広島の広島の映像と一緒に使っている。当初は原爆に関するドキュメンタリー映画だったのだが、レネ監督の指示でドラマ仕立てにまとめ上げた。脚本はこのためにマルグリット=デュラスの書き下ろし。ちなみに原題は『Hiroshima, Mon Amour』で、今はむしろ『ヒロシマ・モン・アモール』と言われることが多い(実情に即してるとは言え、確かに邦題は良くない)。

 広島の町を舞台にした男と女の、文字通り二十四時間の交流を描いた作品。かつて原爆によって破壊された町の、慰霊の騒々しさと虚しさを同時に描いた作品。

 本作ではかつて第二次世界大戦によって敗戦を経験した日本とフランス(フランスは最初はドイツに、次は連合国に敗北してる)の男女を描いているが、これは観たまんまではないのだろう。事実女はかつてドイツ人の愛人を持っていたと言うことから、彼らのそれまでの半生とは、かつて蹂躙された国そのものを指しているのではなかろうか。すれば、この二人の情事とは、かつての記憶を掘り起こしつつ、お互いを慰め合ってると見ることが出来る。

 しかし、同じ敗戦にまみえた両者であったとしても、本当にお互いを理解することは出来ない。何故なら、自分自身の記憶が強すぎて、目に見える光景も全て自分の記憶に置き換えてしまってるから。特に彼女の方は、その場所に身を置きながら、あくまで外から観ているだけでしかないのだ。

 元々レネ監督は本作をドキュメンタリーとして撮るつもりだったらしいから、広島の景色を“観る”だけで、“分かる”とは思わずに撮影したのでは無かろうかと思う。だから、映像もかなり突き放したようなものになっているのかも知れない。

 ただ、そのドキュメンタリーがストーリー仕立てになった過程を考えるに、最初はレネ監督は憐憫の想いを持ち、破壊し尽くされた寒村を撮影しようと考えていたのかも知れない。その幻想が、見事に復興した広島の町を見た事で崩れ去ってしまったがためにストーリー仕立てにしたんじゃなかろうか?とも思えてしまう。ヴェンダース監督の『東京画』(1985)の時にも感じた居心地の悪さと同じものを感じてしまう。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。