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[コメント] ミュンヘンへの夜行列車(1940/英)

時代的に言えば国威高揚を目的としてるはずなのですが、ドイツ人を決して完全な悪人だとか、無能だとかに描いてないのも特徴的ですね。冷静なヘンリードも格好良し。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 時代性から言えば、丁度第二次世界大戦が始まった直後に作られた作品なので、イギリスとドイツを完全に善悪に対比させるなど国威高揚の部分も確かに感じられるのだが、根本的にはエンターテインメントに徹していて、時代的知識なしに観ても全く遜色ない。

 物語は基本的にはストレートな作品だが、前半部分で教授父娘がドイツの罠によって拘束されるまで、そして後半はハリソンが二人を救出するまでが描かれるという、見事に分割された物語となっている。見所は後半で、表題通り夜行列車の中のみで展開していく。

 列車のみを舞台とする作品にもいくつか傑作と呼べる作品があり、その中でもヒッチコックの『バルカン超特急』(1938)はアクション性を上手く取り入れ、紛れもなく傑作と言える。その2年後に作られたのが本作。同じイギリスという土地柄なのか、あるいは多少参考にしたところがあるのか、『バルカン超特急』と結構似た部分も散見出来るが(クリケット好きな会話なんかはモロだけどね)、本作もかなり良い線いってる。特に狭い車内を上手く使った後半のストーリー展開はサスペンスとしても充分面白い。アクションは抑えめだとしても、緊迫した演出は後のリード監督作品にしっかり受け継がれている。所々見られるコミカルな演出も良い息継ぎ(ちょっと滑りがちとはいえ)。

 物語のテンポを重要視したために設定的には多少難があるものの、サスペンス好きには是非観ていただきたい作品。

(評価:★3)

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