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[コメント] 小早川家の秋(1961/日)

小津作品は理解したいとは思うのだが、なかなか難しいです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 小津監督お得意の娘の結婚と父の関係を描いた作品だが、この作品では上手く世相を捉えて、過去に栄華を誇った資産家の一家が、徐々に近代のシステムに飲み込まれてしまう課程を丹念に描いているのが巧い。

 人を引きつける魅力があり、決断力もあるが、同時に女にだらしないという旧世代の当主を代表するかのような万兵衛を中村鴈治郎が好演しており、それが他の小津作品と較べ、ちょっと違和感があるものの(活き活きしすぎてる気がする)、その違和感もやがて小津風の雰囲気に飲み込まれ、やがて静かに幕を閉じる。きちんとそれを計算してやってるんだから、流石監督だ。と納得できてしまう。周りの世界は急速に変化をしているのに、この映画では、万兵衛の死に象徴される旧システムの崩壊が、一家のレベルで静かに進行していく。それだけでなく、やや新しい世代にある秋子は、夫が死んでも自分一人で働いているし、次女の紀子はあんまり結婚そのものを重視してない。三つの結婚話が実は全然違っていると言うところがあって、改めて考えてみると面白い素材を使ったものだ。

 ただ一方、この作品はカラーの色がきつすぎて、話にそぐわないように思えてしまう。好んで赤を用いているようだが、その色合いがきつすぎるのだ。人間よりも庭に植えられた花の方に視点が行ってしまい、しっとりと落ち着くと言うよりはせわしない感触を受ける。音楽も今ひとつそぐわないようだし、キャラクタが多すぎる分、浮いてるキャラが多いような…

 そんなことを考えていたのだが、調べてみたらこれは珍しい監督の東宝作品だそうで、いつものメンバー以外に中村鴈治郎を含め、多くの東宝キャストが入り込んでいたからと言うのが理由のようだ。監督の作り上げる作品は一見単調なだけに、キャストがどれだけ大切なのかを改めて思わされた。

(評価:★3)

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