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[コメント] エデンの東(1955/米)

まだ親父に向かって土下座は出来たとしても、あんなことは出来ないなあ。多分絶対。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 早逝してしまったため数少ないディーンの主演作品の中でも最高傑作の誉れ高い作品で、同名のスタインベックの小説(未読)の映画化作品。なんでもこれは元々親子三大に渡る物語だったが、その前半部分をカットして後半のみに絞ったそうだ(そのうち読んでみよう)。又、レナード=ローゼンマンのテーマ曲は映画音楽のオールタイム・ベストに必ず入る程に有名。

 ただ、これが面白かったか。と言われると首を傾げる。どうしてもはまりきれなかった。

 一つにはカザン監督とはどうにも相性が悪い事が一つ(監督の作品で好きだと言えるのは『波止場』(1954)しかないと言う事実)。それと何よりディーン自身の演技の質の問題。『理由なき反抗』(1955)の時もそうだけど、反逆者を気取っているディーンの演技が「寂しいよぉ。寂しいよぉ」と切々と訴えてくるのがどうしても合わない。多分その演技こそが彼をして最高の演技者と思わせる部分なのだろうが、私にはどうもその態度が甘ったれすぎで嫌味にしか思えないのだから仕方ない。つまり、一番の売りの部分が嫌いと言うこと。これじゃ根本的に合うわけがない。

 複雑な課程に育ち、厳格な父に愛されることを願いながら、その父の愛情が自分に注がれてないことを知り、悪ぶって、それでも父の愛が欲しくてたまらない(ややマザコン入ってる)…これってアメリカでは共感を呼ぶ青春像なのか?あんな風に親父にすがって泣くなんて真似は絶対にしたくない。

 尚、ディーンは『欲望という名の電車』(1951)のマーロン=ブランド同様カザン監督が主宰するアクターズ・スタジオの出身。ブランドに続き、二人目の伝説的男優がここに誕生した(キャル役にはポール=ニューマンも候補に挙がっていたらしいが、こっちで成功なんだろう)。

 原作は神話に基づいた構成で(題目自身が聖書から取られたものだし)、創世記中、弟アベルを殺したカインを、キャルが一種の兄殺しをすることで敷衍している。それと二人の母ケイトはギリシア神話がモチーフ。敬虔なクリスチャンを脅かすギリシア神話の魔女というのが元にある。ただ、それを掘り下げるとドラマ性がなくなると判断したか、本作ではその部分は微妙にかわされている。そっちの方に突っ込んだら多分ここまで評価されはしなかっただろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus 水那岐[*]

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