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[コメント] ツィゴイネルワイゼン(1980/日)

ストーリーの解説しようにも覚えてません(笑)。だけど画面の一つ一つは鮮明に目に焼き付いてます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画の中には、時折本当にコメントに困る作品というのがある。

 実際、改めて本作のレビューを書こうと思って考えてみたのだが、ストーリーのほとんどを覚えてない。いや、覚える以前にストーリーが最初から分からない。改めてネットで検索してストーリーを調べてみても、「あれ、そうだったっけか?」とか思ってしまうほど。実際思い出されるのは大谷直子が何回も出てきて濡れ場をやってる事くらいしかストーリー部分で覚えているのがないのだ。

 だが、ストーリーではなく、画面の一つ一つは鮮明に頭に焼き付いている。怪談もののような暗い画面が一転して人工的な鮮やかな色彩に彩られる画面転換。まるで呪いのように繰り返し繰り返し現れる浮浪者や子供のイメージ。大谷直子の妖艶さと、彼女の纏う赤い襦袢。骨の素晴らしさを語る原田と、それに合わせてコリコリと鳴る骨の音。そしてツィゴイネルワイゼンの曲の中に出てくる不協和音…視覚、聴覚に訴えるイメージに関してはこれほど鮮明な作品もない。極端な作品である。

 幻想に彩られた画面を縦横無尽に見せつけてくれるカメラワークの素晴らしさもあって、画面映えは凄まじいものがある。

 何というか、鈴木清順監督は、この作品からストーリーを捨てたのではないかと思えてしまう。映画とはイメージを伝える手段であり、そのイメージに物語を従属させてみる。そんな試みのような機がするのだ。そして本作の成功以降、鈴木監督は同じようにイメージ先行の作品を作り続けたのだが、トータルで考えてみると、やっぱり本作が一番完成度が高かったように思える…問題はどういう意味で“完成度”と言うのかということだが…やっぱりこれも“イメージ”としか言えない。

 いずれにせよ、悪夢描写が大好きな私としては、本作は見事なほどのツボでありながら、しかし何が素晴らしいのか、全く言える手段を持たないという…珍しい作品ではある。少なくとも、私の持論“映画は衝撃だ”というのは、本作において見事に言い表されているのは確かだ。

(評価:★4)

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