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[コメント] めし(1951/日)

やるせない気持ちをさせるのは小津監督以上ですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 松竹はかつて成瀬監督に向かって「二人の小津はいらない」と言い放ったという。今にして二人の監督作品を並べてみると、まるでタッチが違うと思うのだが、本作を観て、なるほど。これは小津監督の『お茶漬の味』(1952)と一脈通じるものがあるな。と言う思いを持つ。オチも結構似てる。

 違いがあるとすれば、時代の移り変わりの中での日本における夫婦のあり方を問いただしたのが小津監督であり、それを女性の視点からドラマにしたのが成瀬監督だったのではないだろうか?こちらの方がより生々しい描写がされているし、女性に対して容赦ないプレッシャーを与えているし、感情の爆発も起こっている。なるほどこれが成瀬調という奴か。一見仲睦まじく見えても夫婦はそれぞれの思惑を持ち、感情も違う。当然のことであっても、社会的な立場に立って、「これで良いんだ」としてしまうパターンがいかに多いか。そう言う所にメスを入れ方がやはり成瀬監督の巧い所だ…最後まで容赦なく終わらなかったのでほっとした自分もいるんだけど。

 それにしても本作の演出は見事。特に原節子が身の回りの細かい出来事に目を向ける視点の描写は凄い。精神的に低迷期にあると、身の回りにある全てが心を苛立たせる。何をしても面白くないし、こう言う時に限ってどんな慰めの言葉も空虚にしか感じない。なんかとても身につまされる気分にさせられてしまったよ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)死ぬまでシネマ[*] づん[*]

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