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[コメント] SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010/日)

充分楽しめる作品ですよ。ただし、古代進とキムタクの双方に全く思い入れを持たない人だったら。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 最初に純粋な意味での感想。

 “思ったほど悪くなかった”というのが正直な思い。少なくともオリジナルの「ヤマト」にちゃんと敬意を払いつつ、2000年代作品っぽくは作られてるし、時間もこの長さにきっちりまとめてくれてた。

 何より作品をSFっぽくしようとかなり努力してるのも分かったのが大きい…そう。私が何より心配してたのは、本作が“特撮”としてどれだけ痛々しいものになっているか?と言う一点だったのだから。しかし良くも悪くも本作は“特撮”ではなく“SF”にしようという努力がちゃんと見られたし、CGのお陰で、そこそこちゃんと見られるものにはなっていた。

 特撮観に行ったつもりで、違うものを見せられたので、寂しいようなほっとしたような気分を味わった。たぶんそのほっとした気持ちが強いために、本作を素直に観ることが出来たんだろう。

 推測するに、山崎監督は本物の特撮ファンだからこそ、その辺の機微を分かった上で作っているんだろうと思う。特撮ファンでなければ分からない心の動きまで把握しているとは、監督侮り難し(嘘)。

 物語はメインストーリーは出来るだけ変えないようにしながら、設定の方を色々変えてなるだけコンパクトにまとめ、後はキムタクを中心としたヒロイックな物語にまとめてるけど、これはこれで正解。群像劇っぽさは映画には不要。焦点を絞って後は切り捨てた方がなんぼかましなものが出来る。あくまで一つの側面だけで見た「ヤマト」なのだから、それで良い。

 配役では結構首を傾げる部分もあったけど、それは呑める。古代進役のキムタクは客寄せパンダとしてはベストの配役。どうせ私にとって、は古代や森ユキなんてステレオタイプの役はどうでも良い。私にとって重要事項は、かつての理想の大人、真田役にあったから。そしてその真田役やったギバちゃんは見事なくらいにはまってた。これだけで充分だ(不満があるとしたら、出番が少なかったことと、肉体がサイボーグと言う設定を消してしまった事かな?)。後はアナライザーだろうな。大幅に設定が変わってしまったが、あの姿がちゃんと拝めたのは結構すっきり(声がオリジナルの緒形賢一と言うのも泣かせる。緒形直人が出てるよりこっちの方が嬉しい)。

 設定上、監督がファンだからと言う理由がもっとも大きいとは言え、ほぼ「ギャラクティカ」の丸パクリってのはややマイナス要素とは言え、宇宙人を人外のものにしてしまったのは、物語を単純化させるには一役買った。これもすっきりしていて良いんじゃないかな?ちゃんと伊武雅刀の出番もあったし。

 …ここまで書いて分かった。なんで私がこの作品を肯定的に見られるのか。それは主人公のことを全く考えてなかったからだった。やっぱり観たかったのは、真田士郎であり、デスラーであり、そして特攻だったのだから。そしてそれらは全てちゃんと出ていたのだから悪く言える訳無い。

 そりゃ、色々アラを言えばいくらでも言える。特にキムタクの悩んだふりの演技の嘘くささはひどいもんで、悩んだ結果やってることが全部特攻という、身も蓋もない結論しか導き出せないのは、呆れを通して感動を覚えるほどだ。結論が最初から分かってるなら悩むな。悩むんだったらほかに選択肢を用意しておけ。

 でも、充分楽しめた。結局はただそれだけで良いだろう。

(評価:★3)

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