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[コメント] ホビット 竜に奪われた王国(2013/米=ニュージーランド)

一作目よりもずっとメリハリが利いてる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ロード・オブ・ザ・リング』前日譚である「ホビットの冒険」映画化第2作。既に昨年1作目である1作目『思いがけない冒険』が公開されている。これも決して悪い作品では無かったと思うのだが、そもそも「指輪物語」の実質1/4もない物語で三部作を作るのは無理があるようで、ちょっと間延びした印象を与える作品でもあった。

 演出においては申し分ない作品だとは思うのだが、ちょっと退屈に思えてしまうところが大きかったのが問題。改めてあの作品の問題点を考えてみると、『ロード・オブ・ザ・リング』1作目の焼き直しって感じで、新鮮味が無かったというのが一番の理由じゃないかと思える。

 物語の基調は、魔法使いのガンダルフが主人公の家にやってきて、半ば無理矢理冒険に誘って、仲間と一緒に危機を乗り越えていく、になるのだが、物語は本当にそれだけになってしまった。そのためメリハリが足りなすぎた。これは脚本家も気づいていたか、その足りなさを補うため、本来もう少し後のはずのビルボが指輪を手にするところを一作目に持ってきたりして工夫をしているようではあるが、物語のほとんどは全員一緒に行動しているため、単純になり過ぎ。

 そして二作目となった本作だが、そこら辺に注意して、わざとパーティで別行動を取らせるシーンを多用しているのが特徴的。

 例えばそれはエルフのタウリエルと仲良くなったキーリが戦線脱落して、そこで物語を紡ぐとか、敢えてビルボに別行動を取らせるとか、スマウグに蹂躙された町の過去を描写してみせるとか色々あるが、なんと言ってもガンダルフがパーティから離脱して、そこでこの世界に関わる冒険をさせるシーンが白眉だろう。

 “死人使い”ネクロマンサーを探り、城に入るシーンは特に力が入っている。ここでネクロマンサーが正体を見せるシーンがあり、そこでその姿がアップになる。“彼”がアップになり、その姿が見えるのは、実は先の『ロード・オブ・ザ・リング』ではやってなかったこと。

 一説によれば、ジャクソン監督本人は出来れば劇中サウロンの姿を実際に出したかったそうなのだが(それで実際に動いてる姿も)、原作ファンに配慮して敢えてそのシーンを削ったそうだ。それをここで使ったのは、まさしく『ロード・オブ・ザ・リング』の意趣返しであり、「俺はこれがやりたいんだ!」と言う主張に溢れてる気がした。観ているこちらは、あの一瞬だけで心の中で歓声を上げた。

 そう。これがメリハリというやつだ。物語上、エンカウントと、それを乗り越えることしか出来ないならば、その範囲内で出来る限りの意外性を持たせること。それがしっかりと作られてるって部分が本作の最大の良さ。

 後半スマウグとの戦いは、描写的には素晴らしいのだが、一作目の後半と同じく、長すぎたのは問題かな?もうちょっと短くしてくれれば、ぴたっと収まったとは思うんだけど。このタメが三作目に活かされることを期待したい。

(評価:★4)

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