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[コメント] ミスター・ガラス(2018/米)

燃える展開がほとんどないヒーロー映画。だがそれこそが本作の重要な点だ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『シックス・センス』でブレイクしたシャマラン監督だが、真の手腕が問われる次回作はヒーローを題材に取った『アンブレイカブル』だった。この作品もオチがなかなか見事で、この二作品によって監督は一流と観られるようになった。本当の出世作と言えよう。  ただ、以降の作品は定期的に作られてはいるものの、この最初の二作ほどのヒットはなく、概ね「ちょっと個性的な作品を作る監督」というあたりの認識になってしまった気がする。

 そんな中、久しぶりに個性が光る作品として『スプリット』が出たが、このラストシーンでブルース・ウィリスが登場してびっくりさせられた。しかもそれは単なる客演ではなく、明確に『アンブレイカブル』とつながる物語として。

 『スプリット』と『アンブレイカブル』が合体したことで、この二つの物語をつなげる作品が作られることになった。

 それが本作となるのだが、この二作品を総括するに当たり、明確なテーマを掲げた。

 それはタイトルにも表れているが、ミスター・ガラスことイライジャを主人公とすることだった。

 イライジャはかつて自らがヴィランとなることによってデヴィッドというヒーローを見いだした。『アンブレイカブル』の終わり時点では、イライジャの目的はヒーローを作り出すことだったが、実はそれが本当の目的ではなかった。実はイライジャにはもっと大きな目的があったことが発覚した。そしてそのイライジャの本当の目的というのを探ることでほぼ全編展開することになる。

 その目的というのは、この世界には人間の形をしているものの、人間を超えた数々の能力を持つ人間が古来から存在しており、彼らは「ヒーロー」と呼ばれるのだが、それをある組織が隠蔽し続けてきた。その事実を白日の下にさらすことだった。

 イライジャがヒーローコミックを愛読してきたのは、フィクションとしてのヒーローを見て楽しむためではなく、それが真実を語ろうとしていたということを突き止めるためだったのだ。

 だから自らが敢えて捕らえられることで真実に近づき、組織を出し抜こうと考えた。

 このオチは結構面白い。実はイライジャ自身は身体を動かせないなりに目的のために戦っていたことが分かるし、自らの命を犠牲にして世界の真理をあばくことに成功している。

 数世紀に渡って隠蔽してきた真実を暴くことでこの世界を混乱にたたき込む所業だったかもしれない。その意味ではイライジャは明らかにヴィランとなるが、そうであったとしても、作品としては間違いなく主人公であり、ヒーローとしての活躍だった。

 この辺りはとても面白いのだが、イライジャ自身は車椅子からほとんど動けないために他の人を使うのだが、それが回りくどくなってしまって、演出がかなり間延びしてしまった印象がある。

 デヴィッドというヒーローとビーストというヴィランとの戦いを期待して観ると、展開にだいぶ不満が出るし、この結論でこんな長い時間使う必要はないとかいろいろあって、点数はそこそこに。

 これだったら最初の30分でこの結論出して、そこからヒーロー作品という燃え展開になっていたら大評価だったんだが。

(評価:★3)

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