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[コメント] 1917 命をかけた伝令(2019/英=米)

演出自体は目を惹くし、作品自体も概ね満足いく。だからもう一歩踏み込んだ物語性がほしい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画史において第一次大戦を主題にした作品は数多くある。映画が誕生してほどなくして起こった戦争と言うこともあってか、記録映画として作られたものから、戦争そのものを描くもの、戦火の恋愛を描くものなど、かなり多岐にわたるが、第二次大戦と較べると、戦争そのものよりも人間ドラマの方に重点を置いた作品の方が多い。

 だから一次大戦の戦闘部分を強調した作品が意外に少なく、これを映画化すれば名作ができる確率高いと常々思っていたのだが、なかなかそれができない。

 そんな中でリアルな第一次大戦を、メンデス監督が作ってるという情報は朗報だった。リアリティも高そうだし、いくつもの賞にノミネート。なかなかに期待度が高まっていた。

 そんな訳で期待度は高かったし、実際それに見合うだけの内容は持っていた。

 基本的に本作は長回しのみで撮影され、擬似的な丸々一本分の長回しで構成される作品になってる。ほんものの長回しでないのは、劇中で主人公の意識が飛んで時間が飛んでいることもあるが、巧妙に暗闇を用いて切れ目を入れていることからも分かる。ただ、それをカメラの上手さでしっかりカバーしていて、その撮影は大変面白い。

 ただしいくつか映画的には足りない部分もあったように見受けられる。

 一つには、撮影に力が入りすぎていて、ドラマ部分が少々弱かったこと。意外性もないし、淡々と進む物語に、もうちょっとひねりがほしいと思ってしまう。骨子が単純だからこそ、どこかで意外な部分を作って驚かせてほしかった。撮影の個性よりもそっちの方に力入れてほしかったかな。

 あとは、折角の戦争映画なのに、実際の戦闘はほとんど描写してないのが問題点。主人公スコフィールドは何人かのドイツ兵とも戦ってるけど、それはあくまで個人的なやりとり。戦争の描写は爆撃行われてることくらい。軍隊としてのドイツ兵が不在なのでちょっと盛り上がりに欠ける。

 前半部で菱形戦車の残骸が出てきたが、これも動いてほしかったし、第一次大戦時の空中戦がもうちょっと観たかった。空中から地上に対する攻撃とかも第一次大戦ならではのものがあるので、そっちを描いてほしかった。

 第二次大戦と第一次大戦では戦い方や兵器に大きな違いがあるので、そこを強調して第一次大戦ならではの描写があって然りなのに、そこが弱いところが問題点だった。観たいものが観られないのが少々ストレス溜まる。 

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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