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[コメント] ピアニストを撃て(1960/仏)

興行的には失敗作だそうですが、トリュフォーらしさを知るには格好の一本です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 トリュフォーの監督第2作。デビュー作『大人は判ってくれない』(1959)で国際的な評価を受けるものの、全く違った作風で本作は作られている。

 これは監督自身の狙いだったようで、固定化された評価を受けたくない事と、自分陣の映画の可能性、なかんづくヌーヴェル・ヴァーグの可能性を推し進めようとした結果だと思われる。

 事実、本作は基調は重いし、バッドエンドなのに、どことなくすっとぼけたような人物描写や、ぬる〜いアクション、時折笑わせようとする演出など、様々な意味でB級的要素に溢れた作品に仕上げられていた。

 これもヌーヴェル・ヴァーグの特徴か、即興で撮ったとしか思えないシーンが目白押しで、最初の話から主題もどんどんずれていく。これもスラップスティックな楽しさと言えなくもないが、やはり映画はかちっとピースがはまってないとどうも落ち着かない感じ。コメディ性溢れるアクションも、ストーリーの重さとはしっくりいってない印象を受ける。

 それでも、一作目と較べ、まるで違っているのにかかわらず、やはりこれがトリュフォーだと思わせる確立した演出は流石と言うべきで、私としても決して嫌いではない。カメラワークの緻密さと、編集の良さが光る作品だ。

 ヌーヴェル・ヴァーを既存の映画作りに対する挑戦と考えるのならば、全ての作品は挑戦的な作品となるが、そう言う意味では本作も確かにヌーヴェル・ヴァーグの一本と言えるだろう。

 なお、本作は評論家受けこそしたが、興行的には思わしくなく、失望したトリュフォーは以降こういう形での映画作りはしなくなったとか…まあ、この失敗を受けたからこそ翌年の次作『突然炎のごとく』(1961)が作られることになるのだから、本作の意義はちゃんとあるのだ。

(評価:★3)

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