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[コメント] 網走番外地(1965/日)

出てくるのは男、男、男。色も白、白、黒、白、白、黒…それがストイックさという奴ですね。こんな色気のない作品を劇場作品として投入できたことに拍手したいです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 監督の石井輝男はそもそも怪奇ものや怪談ものを得意とする監督で、アングラ史上に残る数々の名作・迷作を作り上げているが、何故かその代表作となると本作になるのが面白いところ(このシリーズのヒットがあったからこそ好きなアングラ作品を作れたのかも知れない)。そもそも当時はカラー作品はあまり評価されない傾向があり、更に本作は主人公が前科者で女優が出ないと言うので、モノクロの社会派作品の息抜きのような形で上映されたのだが、予想外に本作の方が大ヒットとなってしまったという面白い経緯がある。

 私が本作を観たのは随分後になって、ビデオでだったのだが、結構驚かされたものだ。

 先ず、高倉健がよく喋ること。はしゃぎすぎて自分のやんちゃぶりを反省するシーンがあったり、裸踊りまでしてる。渋くなって寡黙な役ばかり観てきたから、こんな役やってきていたと言うことが結構意外。

 こんな色気の全くない話を邦画界が作ることが出来たと言うことも凄いと思う。女性が出てくるのは回想シーンとか、あるいは面会シーンとかのほんの僅かな間だけ。その中で男の物語が淡々と演じられるのだが、そのストイックさと言い、その根底にある暴力性と言い、観る側にズシンと来るものを持っている。

 そしてやはりこれは「網走」だからこそ意味がある作品だ。酷寒の中、黙々と歩く人の群れと言い、最後の逃亡シーンと言い、目を焼くほどの純白の画面の中だからこそ、その苦しさが分かる。しかも刑務所の中に戻った途端、今度は黒一色。白と黒の画面のコントラストがなんとも味わい深い。私にとっても邦画の名作の一本に数えられる。

(評価:★4)

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