[コメント] 永遠の人(1961/日)
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木下監督は一貫して戦前の自由のない時代の窮屈さと、戦後の自由を対比して描こうとしていた所に特徴がある。その意味で本作はまさに木下監督らしさと言うものを実によく示した作品と言えるだろう。物語自体の構成は『喜びも悲しみも幾年月』(1957)同様夫婦の長い生活を描いた作品だが、『喜びも悲しみも幾年月』が陽性の作品だったのに対し、本作は情念渦巻く陰性の世界で、男を憎み続けて生きる女の怖さを厳しく描いていて、かなり観るのがきつい作品ではある。
正直それまで木下監督作品は戦後民主主義をそのまま良きものとして受け止めているとしか思ってなかったのだが、本作を観て、少々その考えを改めた。戦後民主主義がもたらしたものは、果たして本当に良い事ばかりだったのだろうか?まるでその疑問をぶつけてきているよう。それを悪意と捕らえるのは簡単だが、ある意味では現代になって起こり始めたひずみを、監督らしく戦中を描く手法を使って改めて捉え直したのかも知れない。
『喜びも悲しみも幾年月』で見られた高峰秀子と佐田啓二の夫婦がここでは決して結ばれない悲恋の相手として。その代わりに仲代達矢が夫役として登場するのだが、結果的に一番悲惨な役どころだったんじゃないだろうか。表面上暴力的で野獣のような男だが、どれだけもがいても絡め取られるばかり。それに苛ついてはますます荒れる。かなりきつい役だ。
木下監督特有の「夕景狙い」が全部で6カット。潤沢な予算を使える木下監督ならではの手法。
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