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[コメント] 戒厳令(1973/日)

台詞と緊張感のみで構成された作品。観る時は相当な気合いが必要です。さすがATG
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 2.26事件を背景に、決起した青年将校と北一輝の生き様を描いた作品で、自分の書いた作品がいつの間にか日本を揺るがす事件へと発展していくのを、ただ見守るしかできない北の生活を淡々と描く作品で、事件そのものの描写は背後に隠れ、北と妻、そして青年将校らとの話し合いがひたすら続いていく。ATG作品らしい観念的な作品で、2.26事件に当時の状況を重ね合わせ、70年代前半の世相を反映しているのがよく分かる。

 言葉とは恐ろしいもの。時としてそれは自分の考えを越え、世界そのものを巻き込んでしまうことがある…マルクスが生きていたら、ここでの北のように悩んでいたことだろう。

 その辺のことを考え合わせると、本作を製作した意図が垣間見えるようで大変興味深い所だ。

 作品そのものがほとんど会話と内省的な三國連太郎一人だけの描写で終わっているため(要するに画が動いてない)、カメラアングルは凝りに凝っており、冴え冴えとした描写も光っている。

 ただし、現代になって本作を観てみると、台詞ばかりの作品のため、かなり鬱陶しく感じるのも事実で、しかも虚々実々のやりとりが続くので観ているだけで凄く疲れてしまう。

 思想を映像化するというのも映画の価値観の一つなんだろうけど、エンターテインメントとしての側面は全くないので、映画単体としての評価は多少低くなってしまう。

(評価:★3)

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