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[コメント] 青春の蹉跌(1974/日)

映画の一つの可能性。好作。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画とは、一つの平面に映し出された画像であり、それ故にこそ、構造的に限界がある。

そこに心象風景をどう入れていくか、それは映画における課題の一つであり、そして可能性を示唆するものであり続ける。

それでいくつかの方向性が考え出されてきた。関係のない画像を挿入する方法や、あるいはモノローグと言った形で(このモノローグというのは映画が作り得た最高の表現形式の一つだと思う)表す方法。等々…

その中でも最高の形式と言い得るものは、多分、画面にドラマ風景を映し出しつつ、しかもそれが心象風景と重なっていると言う表現形式ではないかと思っている。海外を見るなら、なんと言ってもタルコフスキーがそのトップだと思うが、邦画の良作を観ると、決してそれに負けない表現形式を手に入れているものも少なくない。

本作を観て、驚かされたのは、まさにその点が見事に映し出されているように思えたから。青年が見ている風景は、ただ映されているだけではない。彼の思い、苛立ちがそこには映されている。

自分の存在理由が分からなくなった時、ここは私のいるべき場所ではないと思った場所では、画面がいくら明るくとも、動きは停滞して見える。そこに「えんやーとっと」との合いの手が入ると、ますますその停滞感が増すと言う面白い作りとなっている。

殆ど何も言わない、モノローグさえ「えんやーとっと」しか出てこない青年の、どうしようもない苛立ちが見事に表された、好作。

(評価:★4)

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