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[コメント] 処女の泉(1960/スウェーデン)

本当の良作とは、釈然としない部分を考えさせてくれる作品。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 一時期「本当は怖い〜」とかいうシリーズが流行ったことがある。昔話を例に挙げ、ディズニーあたりが脱臭した物語ではなく、その原典をたどり、実はこんなに残酷な作品なのですよ。ということを分かりやすく紹介したもので、「こんなもん読むくらいなら原典読めよ」と言われたらそれまでの作品だった。

 でも確かに昔話って、原典をたどると相当にえぐいのが多い。いじめられた主人公は平気でいじめられた相手を殺すし、理不尽な描写もかなり多い。

 一応童話の形ではあるものの、本作の原典も相当にきつい物語なのだが、それを忠実に映画化したものだから、現在だったら確実にレーティングシステムに引っかかるような物語になってる。なんせ娘が強姦されて殺されるのも、その父親が復讐で強盗を残酷に殴り殺すのも、全部ちゃんと映像化してるもんなあ。特に現代の目から見たら、いくら復讐とは言っても、人殺しをした人が聖なる存在となるのか?と言う激しい疑問点が残り、クライマックスの泉がほとばしるシーンが素直に「良かったね」とは思えないところが問題。

 とは言え、そのパッションこそがこの作品の味であり、この時代にこれだけ容赦のない暴力描写が作れたのか。と感心することは出来る。単純な作品ながら、ぎゅっと詰まった充実した作品として受け取ることも出来る。

 その分、印象深いシーンは多い。ポルノ性を一切排除し、本当に暴力的なレイプシーンも、父親が鬼のような形相で強盗たちを殴り殺すシーンも、鮮明に思い出せる。

 ただ、一番印象に残ったのは、強盗に襲いかかる前にサウナに入っているところだろうな。あのシーンは激しく違和感が残った。あのシーンが何故必要だったのかと考えると、あれは一種の禊ぎなのかもしれないな。

 いろいろ考えさせられる作品で、出来れば保有しておきたい作品の一本。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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