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[コメント] 第七の封印(1956/スウェーデン)

死と向き合う事がチェスに象徴される。人生なんてこれと同じ。死神は一気に命を奪うのではない。徐々に駒を取られ、最後にキング=命が取られる。残った駒が多いか少ないか。それが人生なのか…ってな事を言いたかったか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作はベルイマン監督らしい、非常に哲学的命題を持った作品で、抗いがたい運命に翻弄される人間と、その心理状態の移り変わりを捉えた名作。特にアントニウスの従者役のビョンストランドと死神役のエーケロートのキャラが立っていて、暗い作品の中、不思議にコミカルな演出がなされているのが面白いところ。

 死を前にした人は何段階かの課程を経て死を受け入れるのだそうだが、その中に「取り引き」という課程が入るそうだ。「こういう生活をしたら生き延びられるかも知れない」あるいは「たとえ危険な方法でも生きられるのならば、どんなことでもする」という心理的な課程。アントニウスが死に神のチェス勝負に挑むのはその瞬間の出来事に符合するし、そして様々な課程を経て死を受け入れるに至るまでを克明に描いていたとも言えるだろう。ラストのダンスは意味不明なんだが、確かどこかであれは「死者を贈るダンスだ」と書いていた人がいたようないないような…(『モンティ・パイソン 人生狂想曲』(1983)に似たシーンがあるけど、これにインスパイアされたか?)。

 何よりベイルマン監督のイマジネーションに敬意を表したい。

 そういや本作の死神はは『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)にも登場してる。たまたまあれを観るほんのちょっと前にビデオで本作を観ていたので(観ていて良かったよ)、なんだか嬉しくなった記憶がある。

 こういう不思議な作品はなかなか観客受けがしないので、自費製作で徹底的に時間をかけてコツコツと監督がセルフフィルムで作るか、その逆にあっと言う間の早撮りで作るかのどちらかになりやすいが、本作は後者。監督の『夏の夜は三たび微笑む』が成功したお陰でスヴェンスク・フィルムインダストリが35日以内の撮影なら。と言う条件で撮影することが出来たもの。早撮りだからこそ、イマジネーションがフィルムに焼き付けられるってのもあるんだな。

 ところで地平線でのダンス場面では撮影当日に雨が降ったため、みんなで帰り支度をしていたところ、突然天気が変わったので再びカメラを回す。ただし俳優の何人かは既に帰っていたため、大道具助手などに衣装を着せて踊らせたそうな。

(評価:★4)

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