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[コメント] 夕陽のギャングたち(1971/伊)

友情ではなく打算でもない。お互いに嫌い合っているからこそなされる不思議な関係。マカロニの最高の強味が出てます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 主に低予算作品で知られるマカロニ・ウエスタンだが、その中では最も派手で大掛かりな作品と言えるのが本作。特徴的な赤茶けた舞台で派手で非情なドラマが展開する。派手さ、キャラ描写、物語性全体が上手くはまった作品と言えるだろう。

 本作は爆破の描写がとても多いが、予算や規制のの関係上なかなかそれができないハリウッド作とは異なり、容赦なくどかんどかんと爆発させているのが一つの特徴。特にクライマックスあたりになると、本当に死人が出てるんじゃないのか?と思えるほどで、よくこんな危険なスタントやる人が、しかもこんなにたくさんいるんだろう?と考えてしまうほど。確かにそこはかとなく安っぽさがあるのも事実としても、マカロニの強みを最大限に活かした描写には違いない。

 また、恋愛描写などを重視せず、汗臭い男たちによるドラマの展開具合も物語によくはまる。前半部分で、まるで何かの冗談のような物語が展開していったと思ったら、後半の物語がものすごくきつくなっていく。この転換によって物語は引き締まるし、後半のきつさがますます映える。

 しかし、本作の最大の売りはキャラクタ描写。ここに登場するコバーン、スタイガー共に見事なはまり具合。「マイトしか信じない」というマロリーを演じているコバーンはいかにも「死に場所を求めている」って雰囲気がとにかく良く出ている。まさに寡黙に戦う男そのものでコバーンらしさがとにかくよく出ている。これは格好良いのだが、本作ではむしろスタイガーの上手さが光る。この人がオスカーを得た『夜の大捜査線』(1967)もそうだったけど、この人はタフガイを装う繊細な心の持ち主って役が上手い。ここでも当初は陽気で非情な山賊だったが、彼にとって全てだった家族を失って、その性格を覆い隠して、やはり死に場所を求めるようなキャラに変わる。その寡黙さの中には、欲をかいてしまったために自分が冒してしまった過ちや、それを引き起こしてしまったマロリーに対する忸怩たる思いが隠されている。その思いを隠し通しながら、家族にとっての仇とも言えるマロリーについていく。

 ここにおいてこのコンビは最強になる。友情ではなく打算でもない。お互いに嫌い合っているからこそなされる不思議な関係。だがコンビとして戦い、最も信頼する戦友に変わったのだ。この単純なしからぬ不思議な関係こそが本作の最大の売りだ。この複雑な関係あってこそ、本当に本作が“男達の物語”へとなっていく。  それにレオーネの音楽が重なることで、盛り上がりも最高。本作のモリコーネの音楽は感傷的な雰囲気が良く出ているのだが、それが二人の心の叫びを表しているよう。

(評価:★4)

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