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[コメント] 陰陽師(2001/日)

アヴァロン』を撮る際、押井守監督は「実写とアニメは融合していく」と言っていた。それがこんな形で世に出ていたのか。としみじみ思った。ただし、押井守の言っていたこととは、まるで異なる形で。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 かつてSFXとワイヤー・アクションの組み合わせにより、アニメーション的な表現が実写でも可能であることを『マトリックス』が示し、それをアニメーションの本家である日本が逆輸入した形で作り上げた。

 やや安っぽさを感じるが、まあそれは許すし、ストーリーの安直さも許そう。流行りに乗って陰陽師を使ったこと、本来の人の様々な想いと言うものを主題としたはずの原作を無視したのも仕方ないと諦めよう。

 しかし、SFXというのは、本来あくまでストーリーを補完するものであることを完全に無視し、そればかりがこれでもか!と言うほど出てきているのは何とも、トホホな感じ。

 人の想いというものを映像化するのにアニメーション的な表現を使ってどうすんじゃ(映画で想いを表現するのに今まで本当に苦労してきた。微妙な間や視線によって今までそれを表現しようと努力してきたのだ。一方アニメはそのような表現がとても困難だから、ビジュアルに走らざるを得なかった。それをわざわざ実写に逆輸入してどうするんだよ)。

 それに今の漫画界、アニメ界で一番嫌な風潮が安直に人を殺して、そいつをやっぱり安直に生き返らせる所にあるが(人の死は一番衝撃を与えやすいからね)、それを実写でやると陳腐さに輪をかけることになること、少しは考えて欲しい。こんな作品が日本アカデミーにズラズラとノミネートされていると言う事実そのものが邦画の底の浅さを示しているようだ。

 でもキャラクターには結構好感を持ったな。勿論清明役の野村萬斎は(変な)迫力が満点だったし(昔のNHKの大河ドラマでもこんな感じだった)、博雅役の伊藤英明は原作っぽさが損なわれてなかったし。それに道尊役の真田広之野村萬斎とは又別種な魅力を出していて、これも結構良かったんじゃないかな?でも、時代劇で格好良い人間役って言えば、今は必ず真田広之を出すね。こんな所にも邦画の層の薄さを感じてしまう。

(評価:★3)

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