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[コメント] チョコレート(2001/米)

主題は人種差別ではないと思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 アメリカでは定期的に登場し、多くは高い評価を受ける人種差別ものの作品の一本とされる。未だアフリカ系に対する差別の色濃い南部を舞台に、その偏見を越えていく二人の姿が描かれていく。

 その基本線は確か。ただ、果たしてこれは本当に単なる人種差別だけがテーマなんだろうか?いや、確かにそのテーマはあるんだけど、それよりもっと重視されているのが、民族云々ではなく、人間として寂しさを越えていく過程こそが重要なのではないだろうか?それを超えていくために必要なのは自分自身の中にある偏見と、周囲の人の無理解に負けない心。別段人種差別問題が無くても本作は実は立派に話としては成り立つ。ただその最もわかりやすい形として人種差別を持ち出したのだろう。

 だからことさら人種差別的な問題意識を持つのではなく、あくまで人間同士のドラマとして観るべきなんじゃないかと思う。少なくともそれに対して逆偏見を持ち出したり、そこで闘士となるような描写もない。あくまでこれは人間同士のドラマなんだ。

 改めてそう考えて本作を観てみると、とても静かに、しかし確実に相手を受け入れていく課程が描かれていくのが分かってくる。最初の結びつきはお互いの寂しさから出たもの。最初はお互いの偏見を乗り越えることから始まり、その後に痛みを持ちつつ互いを理解することによってその結びつきは本物になっていく。その結びつきを丁寧に丁寧に描いた作品であったことが分かる。

 男と女の物語と言うより、家族を失った二人が新しい家族を作っていく物語。しんみりと良い作品であった。

 実はその辺が観ていてあんまり自分の中で整理が付かなかったのだが、私が本作を観たのはハギス監督の『クラッシュ』(2005)を観る直前だった。『クラッシュ』でも人種差別がテーマだとされていたが、逆に本作と合わせて考えたことで、自分なりに納得がいった。

(評価:★4)

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