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[コメント] 8人の女たち(2002/仏)

フランス映画はミュージカル下手とは言われますが、これを観て是非これからもミュージカル作り続けるべきだと思いました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 フランスはミュージカルの傑作が少ないと言われる。確かにミュージカルの本場はアメリカだから、数の上では桁が違うため、あまり振り向かれないようだが、実際はいくつかミュージカルの傑作もあり。特に挑戦的な『シェルブールの雨傘』(1963)は全ミュージカルの中でも特異な位置にありつつ、紛れもない傑作だった。ひょっとして本作はそれ以来の傑作の誕生だったかも知れない。フランス映画では珍しく近くのシネコンに来たのに観に行かず、後でテレビで観た時、「失敗した!」と本気で思った。こんな楽しいミュージカル観たのは久々だ。

 新旧のフランス女優を一堂に介し、ストーリーとミュージカルを完全に分離した、まるで舞台劇のような作品に仕上げられているのだが、どれほど残酷な現実を目の前にしても、最初の内はみんなおっとりして本音を出さない。真剣味がなさそうでありそうな不思議な間を持っているので、突然のミュージカルシーンが妙に映える。その中で物語が進む内に全員の表層がだんだん破れてきて本音が徐々に見えてくる辺りの構成は見事で、全員が全員本音がまるで違う所にあるものだから、それぞれに二重性を持ったしっかり見所と演技が楽しめる。表層と本音で8人×2の過不足なく描写したオゾン監督の力量に感服。

 ドヌーブのようなヴェテランでもかなり変な役をやってるのが本作での意外な点で、この人ってあんまり本音を出す役演ってなかったはずなのに、いざ演ってみると本当にはまり役って感じ。

 いかにも作り物じみたセットの中で話が展開していくが、まさか謎まで作り物だったとは…この辺のケレン味というか、パロディ的描写が実に楽しい。そう言えば『気狂いピエロ』(1965)でベルナンドとカリーナが死体の置いてある脇でミュージカルやってたシーンがあったが、あれって実はフランス的なジョークだったのかな?本作観てそう思える。

(評価:★4)

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