[コメント] しあわせ(1998/仏=カナダ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
いつもその線が紡ぎだす現実は動いているが、幸福であればある程その回転は速くなり 不幸の間だけは動かない、又はとてもスローになる。
何故ならば、愛する人間の時が止まってしまったのならば、 愛している人間の時も止まらざるおえないものだから。
そして、しあわせは後で返還可能なモノで無く、 不幸も又返還可能なモノでは無い。
何故なら不幸はそれは蓄積してしまっては只々、 汚泥の様な沼の中で沈んで自分の中に鬱屈した濁りが自分を支配してしまうから。
だからこそ主人公はそのビデオカメラに、 未来に恋人や子供と見るはずだった風景を切り取り、そこに哀しみを宿し、 そしていづれかは手放すモノだと承知の上で、返還不能な不幸を海に手放す。
映像画面の虚構だけが、 そのあるはずのモノであった現実を映し出し そこに見出されたモノを見つめているその目線だけが、真実を受け止める。
あの時、赤毛の恋人がビデオカメラを壊さなかったら、 又はあの時、ベニスで絵描きの目に止まらなかったら、 と言う偶然と必然。
はじまりがあれば終わりもある、 いや終わってしまったのなら、また新しく始めなければならない事も あると言う少し切ないが、とても優しいしあわせ。
只々、現実は繰り返す、回転する踊り子の様に。
はじまりがあって終わりがあり、 また何かが始まる、現実の中を生きているのなら尚の事。
それはとても哀しく切ないが、まだ何か新しい事が始まるのかも知れないと言う、 少し希望を持って生きていってもイイのかも知れないと言う優しいしあわせ。
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