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[コメント] ゲド戦記(2006/日)

自分に子供がいたとしたら…絶対に観せたくないなと思いました。
リア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







子供が沢山観に来ていましたが、子供が観るファンタジーとは思えない不気味さと不安を最初から覚えました。 その後アレンが父親を刺した際は、まさかこの子が主人公だとは思わなかったし(思いたくなかったし)、 逃亡の途中でハイエナだか狼みたいな動物に襲われた際、波動か何かで撃退した時には不気味さが増幅し、 父親を刺した時には前髪で見えなかったアレンの表情が露わになり…その表情に戦慄が走りました。 その後はずっと胸糞悪い思いを払拭しきれぬままの鑑賞になってしまいました。。

アレンは、近年ニュースで見たり本で読んだりする、キレやすく何を考えているか分からない現代の子を投影した人物に映りました。 …覇気の無い目、不安げな目、人の様子を探る上目遣いのような目、きちがいじみた目

アレンの 「命なんていらない」(だったかな?)や、アレンや現代の子のキレやすかったり突如凶暴化等は、自分を守る術の一種の防御線を張る行為な気がします。 が、どんな不安を抱え、葛藤があったとしても…人を殺めるなんて、決していけない事だと思います。 アレンのように、生きる目的や己の存在意義、生に対しての漠然とした恐れや不安、情緒不安定、な子供が本作を観て、 心が楽になったり少しは心が開放されるかもしれません。 が、中には模倣する子もいる気がしてなりません。 真っ向から立ち向かうよりも、逃げる方が楽だから。 アレンの場合、父親が偉大なだけに…と、なあんとなく人よりも闇が深くなる気も分からないではないですが… それにしても父親を刺すのは間違っているし、動機が漠然とし過ぎていて、嫌悪を覚えてしまったんです。 影が分身がと言ってる場合じゃない。 自分を見失い、自分ではコントロールが効かないんだろうなと分かってはいるのですが…

結局アレンは心を開放し、更生するようですが、それにしても、自分に小さい子供が居たとしたら…観せたくないなと思いました。 と言うか、観せてはいけないと思いました。 私が小さい頃、人、ましてや親を殺す映画など観た事がありません。 『ほたるの墓』 や『ハチ公物語』 や『子猫物語』 等を観ましたし、子供にもそういう物を観せたいと思います。『トトロ』 とか『インクレディブル』 とか『ニモ』 とか…

また、アレンの心の闇や葛藤が、あの画によって伝わり難かったのも残念です。 アレンの心の闇を、身分だけで表現させようとしたのか? 王子と言う身分なの、偉大な親を持ってるの、そんな親を持つ者の苦悩が分かるでしょ?とでも言いたいのか…。 不安でいっぱい情緒不安定、と言うのは目付きで表れていたけれど、さすがに身分と目付きだけで深い闇を表現するのは無理があるでしょう。

テルーの歌は良かった。アレン同様、私も涙が滲んだ。 色々な場所であの曲を耳にした事はあったが、何とも思わなかったのに。

メッセージもよく分かる。そうだよねえと結構ズシンとき、画面に見入った。 文章にするとうまく表現できない感覚的な物だし、それを言葉に置き換えようとすると解釈が変わってきてしまいそうで怖いのでやめる。

その他良かった点は、 キャラが濃い俳優を声優に使っていないので、その声を聞くと俳優の顔が浮かんでしまうと言った事がなかった声優陣。 初夏、風になびいて揺れる稲穂を彷彿とする草原、眩しい太陽、夜の景色の濃淡、空(雲の濃淡)、道端に咲く赤や紫といった様々な小花など景色の画は良かった。

06.08.18@/06.08.22 記

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)4分33秒[*] uyo[*]

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