いや、この配給会社が配給する、しかもこんな映画に何も期待しちゃいないし、「中途半端」という感想自体的外れな気がするのだが、正直これじゃ”そっち系”の期待を満足させる事もできていない。下らない。

俺は下らない映画は大好きで、この映画もプロットに惹かれてみたけど、これはいただけない。中年男がエビに（青春（？）を含め）自身の全てを投げ捨ててまで一攫千金を当てようとする。彼の情熱は金儲けに傾いているのか、それとも「ボクサーを育てる」事に当てているのかあやふや。あやふやでもいいんだけど（っていうか、そんなもんしっかり描かれる事に期待はしちゃいない）、変に説教せずにボクシングしろよ！プロレスでもK-1でもなんでもいい。とにかく変なショー番組をクライマックスに持ってくるのは、単純に観客をバカにしているだけだろ！？

当初は「見世物」として育てていたが、飼育していく内に（彼？）エビに愛情を抱き始める。それまで育ててきたボクサーに注いだ愛情を遥かに凌ぐ愛情で。だから最後の「見世物」には我慢できなかった。そして海に返した。

って、おい！！それでいいのか？いや、倫理つーかモラルつーか、そういう意味では全然問題ない、むしろ、そうじゃないとダメなんだろうけど、如何せん説教臭すぎるし、観客がそれを求めて見に来てるのだろうか？少なくとも俺は『えびボクサー』を見に行った訳で、ボクシングをしないエビにはあまり興味無い。

テレビ局に企画を売り歩くシーンの冗長さと言ったらキツすぎる。あの新人ボクサーと恋人のセックスに関する悩みも描く必要性をあまり感じない。あんなものをあんなにダラダラ撮る必要性が無いし、クライマックスのコロシアム（？）のショーも正直だるい。おまけにそこで説教させて動物に対する愛情云々ぬかしておしまい、とは我慢ならない。

まずエビを獲得し、すぐにテレビに駆け込んでも企画は採用されず、やっと採用されても見世物的な物でしかない（＝この作品のクライマックス）という箇所を最初の４０分くらいで描いてしまえばいい。

そしてどっかのボクシングジムでエビ共々バカにされて「見返してやる！」と、２０分くらい中年男とエビが少しずつ友情を育みながらの『レジング・ブル』なボクシングトレーニングを描く。それを見ながらあの脇役の新人ボクサーもトレーニングを開始し勝ち始めて・・・そしてクライマックスで二人は死闘を演じる。そのくらいのモンじゃないと。少なからず、エビがボクシングをして訳の分らないシュールな熱さがないと。

俺は下手に説教臭い作品を見に行ったのではなくて、えびのボクシング映画を見に行った。正直、この作品がどうしてここまで知名度が上がったのかわからない。

だって、「エビがボクシングする映画」って売っておいて、こんな脱力ギャグをプロットの時点でかましておいて、おまけに劇中にも「テレビのカニを殴って壁ぶっ壊す」だとか「ケバブが胸の谷間に落ちた」だとか（違）「コンドーム製造工場での遠投」とか脱力ギャグ満載なのに、どうしてストーリーを真面目に作る！？

もっと肩の力ぬいて脳みそすっからかんの低俗B級スポ根エビ虐待映画でも撮ってくれよ。っていうか、この映画ってエビよりも、むしろ人間が虐待されてまっせ。

しっかし、あの冒頭のコンドーム遠投は最高だった。やったなぁ、あぁいうの。ゴムに水入れて投げたり（アホ）。けどこの”コンドーム製造工場で働いている”って設定って、話に全く絡んでない。にも関わらず劇中にはコンドームが溢れ返っている。

正直、そこまで下品にやってるくせにどうして説教するのかわからないよ。

えっ？もしかしてこの作品って「下品でオ下劣なのに、ラストにゃ的外れの説教する映画」ってオチ自体がギャグって事なのか！？

おいおい。そりゃないぜ。確かにある意味じゃ正しいクソ映画（←誉め言葉）の作り方かもしれないけど。