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[コメント] 春夏秋冬そして春(2003/独=韓国)

鋭く、残酷で暖かい眼差し。『悪い男』に対極的に感じもするが、あんな映画が撮れるからこそ、この映画が撮れると思う。 2004年12月19日劇場鑑賞(★3.5)
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







悪い男』でもギドクは、主人公に一言二言程度しか台詞を喋らせなかったにも関わらず、圧倒的な力で観客のハートに映像と言う名の言葉をクリティカルヒットさせる。その鋭く研ぎ澄まされた残酷な暴力と、その悲しみを言葉を超えた言葉を映像と言う形で吐き出させてみせる。それだけの力を持ちえるキム・ギドクであるからこそ、本作はコレだけ台詞の少ない独特の雰囲気を持っているにも関わらず、見事な成功を収めたと俺は思う。

語らずして語る事を、既に悟りきっているギドクだからこそ出来た、語らない語る映画。台詞で語って観客に教え込むのではなく、観客に「感じさせる」。コレこそが仏教じゃないのだろうか。いや、うろ覚えで良く分からないのだけど、どこかで聴いた話なんだけど、死んだ子供を抱えて女が泣きながら「この子を生き返らせてくれ」に仏陀に頼み込みに行った際、仏陀は「生き返らない」と教えるのではなく、自分で悟らせた、というエピソードがあるとか、なんとか。

まさに、台詞ではなく、映像と言う形で一つの“何か”を語りつくす。感じさせる。観客は、否応にも、この映像に引き込まれ、映画を“感じ”なければならなくなる。

――とかなんとか偉そうな事かいた俺なんだけど、実を言うと、その“何か”ってのがイマイチ何なんだか良く分からないんだよなぁ。

春に罪を学び、夏に執着を抱き、秋に罪を犯し、そして冬に悟り、、、、そして春に戻る。なるほど、見事な映画だと思う。その一連の移り変わり、一つの物語を通して、静かに、熱く「生きる」と言う物語を語っているように俺は思えた。

ある程度作品の中身は予想しており、見事その通りの雰囲気だったのだけど、うーん。ここまでストレートに「分からない」という感想を、鑑賞直後に感じるとは思ってもいなかった。ホント、見た直後は「分からない」と言う感想しか頭に浮かばなかった。ギドクのやろうとした事は何となく分からないでもないのだけど、でも、何だろう、何か、登場人物の、特に和尚さんの自殺のシーンの意味や、最後(冬)に子供を捨てに来た顔を隠した女性の意味など、細かい部分で、頭の鈍い俺にはよく理解出来ない箇所があって、そこらから徐々に消化不良に陥ってしまったのが否めない。

人間の残酷さ。生きると言う行為の残酷さ。それらを徹底的に突き放し、淡々と描く。しかし、同時にそこにギドクの人間愛が溢れている気がしてならない。彼は、突き放して残酷に描くと同時に、優しく物語を語っている。

人の罪はやがて消える、なんて事は無いと思うので、そういうテーマじゃないと思うんだけど、一瞬の激情が過ちを生み、過ち故に罪を背負って生きる事となる。

しかし、それでも人は生きていく、みたいな感じなんでしょうか。よくわかんねーやー!!!!

でも、それでも★4をつけているのは(本当は★3.5なんだけどね)、やはりこの映画の底知れぬ力に、魅力に惹かれてしまっている証拠だろう。

以上、宗教をあまり好いて居ない人間のレビューでした。

(評価:★4)

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