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[コメント] インディア(1958/仏=伊)

自然との調和
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







インドの入り口ボンベイ、そこには様々な人々が寛容の精神で調和して暮らしている.民族が異なれば、宗教も異なり、言語、文化、風習も異なるのだが.

象使い.

カメラはインドの奥地、象の棲む森の中へ.象の力を借りて林業を営む象使い、その暮らしは、象の自然な暮らしと共にある.象使いの男の恋愛、そして結婚と、象の妊娠を絡めて、人間と自然との調和を描きました.

ダム建設.

インドの大河、ヒマラヤを源にする聖なる流れは、時として洪水を起こし、人々の命を奪う.ダムを造り治水を行うということは、自然との共存、調和を意味するのですが、ある意味では自然に対する征服、それは不調和であるのかもしれません.ダム工事の労務者の家族は、ダムの完成と共に他の土地に移ることになる.妻は慣れ親しんだ土地を離れるのを嫌がり、夫婦喧嘩になりました.

トラと老人.

余す所なく耕された水田地帯.その風景はやはり自然との調和と言ってよいのでしょう.その水田地帯を抜け、カメラはトラの棲む森の中へ.そこに住む村人の生活は自然と共にあり、そして隠居生活の老人の日課は森の中で自然と溶け合うこと.老人の散策する森にトラも棲むのだけど、そのトラは普段は決して人を襲うことはない. ある日やって来た鉄の鉱床の調査隊、その騒音は森の静寂を奪い、森の調和を破壊した.騒音で多くの動物達が逃げ出し、森の調和が破壊されたから、トラは人間を襲うことになったのですね.

猿のラム.

熱波に倒れた飼い主.独り街に辿り着いたラム.ラム独りだけで群衆の前で芸を観せ小銭を稼ぐのだけど、猿一匹が人間の社会で生きては行けない.そして、人間に育てられたラムは、自然界に戻ろうとしても、それも許されなかった.

科学の進歩と共に開発と称し、自然破壊を進める人間社会.それは、人間の暮らし、その営みも、本来自然の一部である事を忘れ去っている.自然界に戻ろうとしてもできなかったラムの姿は、自分達が自然の一部であることを忘れ去っている人間の姿であり、同時に、その人間が行っている自然破壊は、元の自然を取り戻すことのできない行為である、と、指摘している.

書き加えれば、この映画は決してドキュメンタリではありません.この映画が正しくインドの実態を伝えるものでないのは当然です.現地人が出演するけど、具体的に何を言ってるか、言葉は何も解りません.

(評価:★5)

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