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[コメント] 鬼畜(1977/日)

明らかに半端じゃない力作なのだが正直言ってしんどい。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







観る前から悪名高かった「ご飯無理やり食わせ」「クリームパン無理やり食わせ」の場面は心の準備があったので大丈夫だったのだが、東京タワーの場面には心底参った。ああいうふうに、ある日親から捨てられて孤児となることのリアリティーは凄まじい。当然ながら子を捨てる親の側のリアリティーも凄まじく、緒形拳はもう生涯、東京タワーを普通に見ることができない。恐ろしい、夢の中のような場面だった。

オレが不思議なのは、こういう映画は誰が望んで生まれ落ちるのだろうということだ。あらゆる映画は、何かしら人をハッピーにさせるために作られる。それは恐怖映画でも、残酷ドキュメンタリーでも、スカトロパゾリーニでもそうなんであって、誰かがウヒヒと喜んでるのが想像つくのだ。しかし『鬼畜』の如き底なしに気分が陰々滅々と落ち込む映画、これは誰が喜んでいるのだろうか。たとえばオレは、今村昌平の人間を土俗や泥んこやおまんこまみれにする映画にも、同様の「誰が喜んでるんだろう?」という長年の疑問を持っている。こういうのが昔は社会派作品ふうとして「有難がられた」という事実は理解できる。ケッチャムの小説みたいなもんなのかなあ。

予告編を観ると、本編ではオンパレードの虐待場面は巧妙に隠されており、親子の絆を描く感動作品のような触れ込みである。そんなん期待してきた観客にこれ見せたんか。松竹はホンマモンの鬼畜映画会社やでえ…

(評価:★4)

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