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[コメント] ブラック・ムーン(1975/仏=独)

才人ルイ・マル作品のなかでも屈指の傑作。シュールレアリズムに興味のある人は観て絶対損はないはず。
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3年ぶりに鑑賞したが評価は★5→★5で変わらず。

この映画はまず『アンダルシアの犬』を想起させる。無声シュールレアリズム映画の頂点がそれだとするならば、本作はトーキー以降のシュールレアリズム映画の最高傑作だと断言したい。「アンダルシアの犬」の比類なき完成度の高さはその上映時間の短さと、サイレントという形式が深く寄与している。逆に言えば、映画が音を得て、次第に長尺化していくと、どうしてもシュールレアリズム性が希薄になってしまう。例えば世間でいわれているルイス・ブニュエル作品だとかヤン・シュバンクマイエルの長編作品などは個々のシーンに特性が認められるものの、全体としてはやはり物語性が充分に残っていて完璧とはとてもいえない。真のシュールレアリズムとは《時間性》から超越した存在だと思う。

「ブラック・ムーン」は長編でトーキーにもかかわらず100パーセントのシュールレアリズム性を発揮している。それは物語性を粉々に粉砕しているからだろう。冒頭の言葉にもあるように、理屈ではない世界観が完璧に構築されている。絶対に理解すべき作品ではない。体で、頭で受け止め、味わえばいいのだ(そんな普通とは異なった、物語性から逸脱した作品だからこそ興行的に大コケしたのだろう)。それでいて最後まで飽きのこない、しっかり映像で語れている極めて技巧的な作品でもある。車で小動物を轢き殺すシーン、気味悪い虫を接写するシーン、一角獣、どれも意味不明で独立しているように見えて、作品には欠かせない要素だ。

■ルイ・マルの才能と守備範囲の深さを思い知らされた。少女が魅せる性的要素はまず欠かせないポイントだろう。非常にキャスティングがよい。一瞬自分にロリータ願望があるのでは、と錯覚してしまうほど少女は魅力的な存在だ。

(評価:★5)

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