コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 幸福なる種族(1944/英)

映画的に盛り上がる話など無い、どこにでもある家族を何十年にわたって描いてるだけである。なのに何故こんなに胸を打つのだろう。
ギスジ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







兄の死、妹が失踪と映画的な要素は確かにあるが、主体となるのはごく普通の「家族」である。

性格が全員違う兄弟、神経質な義理姉、隣の戦友との友情関係、大変可愛らしい猫、結婚、そして死と、別にこの家族を描かなくたっていいドラマがある、隣の家でも良い。極端な話僕の家でもかまわない。子を産み、支えあって生きていくという事がどれだけ感動を生むか、デビット・リーンならきっとやさしく描いてくれる。

ジェントルマンな父が言っていたセリフだが「平凡な生活がどれだけ幸せか」、その言葉が身にしみる映画である。病気などせず健康に暮らしてきたフランク一家にとって、唯一事故で亡くなった兄の死。娘が父・母に知らせに行くシーンはリアルで大変胸の詰まる、そして素晴らしいショットだ。

全編ほとんどが家の中の撮影である。家族と同様「家」も家族と同様描かれていると思う。父と兄が話し合った二階部屋、義理姉と姑がいつも喧嘩している一階応接間?、戦友と隠れて飲んでいた地下?、奇麗な桜としっかり手入れされた奇麗な庭、様々な顔を見せてくれる。あと室内の映像が多い中、時折見せる郊外のシーンは開放的。群衆の描き方は大変迫力がある。

どうでもいい事だが、僕の中でこの作品は10本の中に入る素晴らしい名作である。あたりまえな幸せが感じとれない時、この映画を観ると良い。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。