結末は、別れるのかと思っていたら、ハッピーエンドだった。 ふつうは後者なら、映画をみた後の心持ちはさわやかなはずだけれどもしかし釈然としないものを感じた。

ヘプバーンは蠱惑的な妖精といったイメージが強く、「手のとどかない女性」だからこそ多くのファンがいる。

だが本作では　"Love" in the afternoon だし、お相手がゲイリー・クーパーとはいえ、老境の遊び人。 つまり、孤高のイメージが崩れている。世の男性は嫉妬してしまうのである。

彼女の起用にかんして、ワイルダー監督は失敗していると言えるだろう。

ところで映画の「公共性」ということを考えたとき、 "Love"を扱ったフィルムは当時の年代からして、万人受けするとはいいがたい。

実際それについての具体的なことは何も語られていないし、語れるはずもない。 かろうじてのこされた微妙な演出が観客の想像力を刺激するにとどまっているのみである。 下品すぎず、さりとて何もなかったではつまらない。 何かあったのかと推測させるだけの最低限の演出が、非常な効果を伴っていることは言うまでもない。

重要なのはヘプバーンが先ほど述べたように、清らかなイメージのある点だ。 彼女にかぎって何もない何もありえないといった世間の単純な希望が、 この映画のキーポイントであるところの"Love"を、公共的な映画へと引き戻している。

その意味では監督の眼は女優の起用について確かであるだろう。

個人的には最終的に二人はくっつかないほうがよかったような気がする。 くっついたとしても、クーパーが（役の上で）死んで、また男漁りを 始める、としたほうが面白かったのではなかろうか。