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[コメント] マゴニア(2001/オランダ)

苦い夢の残滓。父が子へ語り継ぐ物語は、いつしか現実と渾然一体となり、見分けがつかなくなる。父は、ほんとうに希望の海へ船出していたのか?
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それとも、鉄格子に覆われた病院のなかで、魂を「マゴニア」なる理想郷へと飛ばせつつ、それぞれに叶わぬ夢を抱えた患者たちの語る物語を異国になぞらえて語っていただけなのだろうか? (息子は、父の話してくれた「希望」をテーマにすると言いながら妙にネガティブな物語を聞き続けるのだが、父がいつも入ってゆく建物に忍び込んだ息子は、そこに精神を病んだような「物語」の主人公たちの陰気な姿を見るのである)

答えは、敢えて提示されない。ただ、マゴニアと名づけられた子に贈られる筈の帆船型の凧だけが、子の小さな手に届くところに残される。子供に語られるには似合わない数々の物語は、いつか事態を彼が把握する日まで、ずっと心に引っかかった棘のように彼の眠りを阻み続けるのだろう。

残酷であり、それゆえに心に残り香を落としてゆく物語である。

(評価:★3)

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